【陸上】男子400mリレー衝撃のバトンミス!不振とメダルの重圧から出た焦り、広がった世界との差

公開日: 更新日:

 衝撃の結末だった。

 男子400メートルリレー決勝が6日の午後10時50分にスタート。日本代表は2016年リオ五輪銀メダルを上回る金を狙ったが、2大会連続3度目のメダル獲得どころか、なんとバトンミスによる途中棄権に終わった。

【写真】この記事の関連写真を見る(12枚)

 多田修平(25)―山県亮太(29)―桐生祥秀(25)―小池祐貴(26)の順で臨み、第1走者の多田が好スタートを切りながら、山県にバトンを渡せなかった。

 5日の午前中に行われた予選は、38秒16の1組3着。タイムは決勝進出8チームの中で最も遅かった。

 大外の9レーンとなり、メンバーが口を揃える「攻撃的なバトンパス」で勝負に出たが、ゴールまでバトンをつなげず、多田は「バトンミスの原因は分からない。また見直して改善していくしかない」とうなだれた。

 陸上ジャーナリストの菅原勲氏がこう語る。

「山県がわずかに早く出てしまったように見えましたが、いずれにしても原因は焦りでしょう。100メートル代表の多田、山県、小池がまさかの予選落ち。ここから負の連鎖が始まったのではないか。全員が『攻めのバトン』と言いましたが、世界との実力差を痛感しながら、それでも金メダルを取らなければならないという過度のプレッシャーがあった。一歩でも先に行かないといけないという焦りがミスを生んだ。全ては走力のなさが原因です」

「新興国にも抜かれた現実を受け止め出直すしか」

 今年6月、100メートルで山県が9秒95の日本新記録を樹立した。

 日本勢4人目の9秒台に陸上界は沸いた。「走力向上」を柱とする日本陸連は「9秒97平均でベストのバトンパスができれば、37秒09が出る」と日本記録(37秒43)を大幅に更新した上で、米国が2019年の世界選手権で優勝した世界歴代2位の37秒10を上回るタイムで金メダルが取れるともくろんでいた。

 しかし、日本と世界の差は縮まるどころか広がっていた。前出の菅原氏が続ける。

「日本はリオの400メートルリレーで銀メダルを獲得し、今回は100メートル9秒台が3人。だから金メダルが取れるという陸連の考えは、あまりにも短絡的ですよ。世界のレベルは確実に上がっています。5年前のリオ五輪の100メートル予選は10秒20で突破できた。9秒台を出した選手は一人もいませんでした。けれでも今回は10秒12が突破ラインで、全体では9秒台が4人もいた。山県にしても、リオの予選は10秒20で準決勝に行けたが、今回は10秒15で予選落ち。先日の100メートル準決勝で中国の蘇炳添(31)が9秒83という衝撃的なアジア記録で決勝に進んだ。日本は400メートルリレーを制したイタリアや4位の中国らの新興国にも抜かれた現実を受け止め、出直すしかありません」

 誰もが予想しなかったバトンミスも、いってみれば必然の結果。世界は確実に遠のいた。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • その他のアクセスランキング

  1. 1
    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

    フィギュア宇野昌磨 電撃引退の裏に新星マリニンとの実力差…また稼ぎ頭失った連盟は先行き不安

  2. 2
    女子ラグビー原わか花 テレビ中継を目にして「コレだ!」 すぐさま強豪校に資料請求、競技人生の幕が開いた

    女子ラグビー原わか花 テレビ中継を目にして「コレだ!」 すぐさま強豪校に資料請求、競技人生の幕が開いた

  3. 3
    女子フィギュアスケート本田真凜が日刊ゲンダイにだけ激白していた“アンチ”への思い

    女子フィギュアスケート本田真凜が日刊ゲンダイにだけ激白していた“アンチ”への思い

  4. 4
    女子ラグビー原わか花の人生を変えた留学経験 体型を変えたフィッシュ&チップス

    女子ラグビー原わか花の人生を変えた留学経験 体型を変えたフィッシュ&チップス

  5. 5
    女子ラグビー原わか花「反対されるかも…」親戚一丸で祖父に隠した高校からのラグビー挑戦

    女子ラグビー原わか花「反対されるかも…」親戚一丸で祖父に隠した高校からのラグビー挑戦

  1. 6
    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

  2. 7
    宇野昌磨の引退で「競技廃れてショー栄える」とフィギュア関係者が嘆き節…ファン離れ深刻懸念

    宇野昌磨の引退で「競技廃れてショー栄える」とフィギュア関係者が嘆き節…ファン離れ深刻懸念

  3. 8
    女子ラグビー原わか花「五輪を目指すのは想像以上に過酷」…一度は折れた心を再起させた妹の涙

    女子ラグビー原わか花「五輪を目指すのは想像以上に過酷」…一度は折れた心を再起させた妹の涙

  4. 9
    錦織圭は相性のいい8月の全米オープンを見据え、時代の急な流れとも戦っている

    錦織圭は相性のいい8月の全米オープンを見据え、時代の急な流れとも戦っている

  5. 10
    女子ラグビー原わか花 チャレンジ精神の原点は少女時代のドブ遊び  「五輪は出場しただけで満足するつもりはない」

    女子ラグビー原わか花 チャレンジ精神の原点は少女時代のドブ遊び 「五輪は出場しただけで満足するつもりはない」

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

  2. 2
    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

  3. 3
    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

  4. 4
    ロピア(下)埼玉の上場スーパー「スーパーバリュー」買収で“変身”した

    ロピア(下)埼玉の上場スーパー「スーパーバリュー」買収で“変身”した

  5. 5
    伊藤信太郎環境相は“ボンボン”2世議員…六本木の大豪邸、幼稚舎から慶応育ちで「弱者の気持ち」分かるワケなし

    伊藤信太郎環境相は“ボンボン”2世議員…六本木の大豪邸、幼稚舎から慶応育ちで「弱者の気持ち」分かるワケなし

  1. 6
    補選トップ当選の酒井なつみさん、政治って困窮者を守るためにあるんじゃないの?

    補選トップ当選の酒井なつみさん、政治って困窮者を守るためにあるんじゃないの?

  2. 7
    “エッフェル姉さん”は何しに豪州・韓国へ? GWに再び海外視察、松川るい事務所を直撃した

    “エッフェル姉さん”は何しに豪州・韓国へ? GWに再び海外視察、松川るい事務所を直撃した

  3. 8
    巨人・大城卓三が今オフ国内FA権行使か…監督交代で評価と立場が一変、出場数も激減

    巨人・大城卓三が今オフ国内FA権行使か…監督交代で評価と立場が一変、出場数も激減

  4. 9
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  5. 10
    「金」相場は歴史的な高騰に沸くけれど…次なる投資先に銀・プラチナはアリ?

    「金」相場は歴史的な高騰に沸くけれど…次なる投資先に銀・プラチナはアリ?