今田美桜「悪女(わる)」が石田ひかりの“平成版”と比べて物足りない理由

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 今田美桜(25)の初主演ドラマ『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ系 毎週水曜 夜10:00放送)が面白いと評判だ。SNSでは〈原作漫画は古すぎて読むのを止めたけどドラマは面白い〉〈数字尻上がりにがんばです〉と話題なのに、視聴率は7~8%台で推移しており、いまいち盛り上がりに欠ける。

 ドラマは、ポンコツだが底抜けに明るい主人公・田中麻理鈴(今田)が、運よく入社した大手IT企業で窓際部署に配属されるも、偶然出会ったエリート男性社員に一目惚れ。その男性に認められるために本気で出世を目指すのだが、その過程で女性が直面するいくつもの問題にぶち当たり、そのつど乗り越えていく姿を描いている。

■“悪女”の部分が描かれておらずタイトルとのズレ

「今田はおかっぱ頭で服装もダサく、明るさだけが取り柄の垢抜けない女性として登場します。失敗しても明るく元気溌溂。その姿が可愛く、演技も上手い。しかし、そもそも顔が美形すぎてキラキラオーラがハンパない。おそらく設定ではダサかった麻理鈴が、出世の階段を登るごとに徐々に垢抜けて洗練された女性に代わっていくのだと思いますが、ダサいのは髪型、服装だけでそれが逆に不自然に見えてしまいリアリティに欠けます。しかも、タイトルにもある“悪女”の部分が全く描かれていないので、タイトルと中身にズレを感じます」(芸能ライター・弘世一紀氏)

 物語の原作は1988年から97年まで連載されていた漫画『悪女(わる)』(講談社)。麻理鈴はポンコツで大食い、酒豪のヘビースモーカーで設定だけでも“悪女”の要素たっぷり。

鶴田真由のような“嫌な女”もいない

 92年に放送された平成版『悪女(わる)』(日テレ系)で描かれた石田ひかり(49)が演じた麻理鈴は、就業中もタバコをふかすほどのヘビースモーカーだった。入社時に「過労死するまで頑張ります!」と自己紹介し、秘書課に対し「主婦みたいですね」と毒を吐き、目薬を挿してウソ泣きしたりと、しっかり“悪女”だった。同僚にも“悪女”がいた。特に、麻理鈴に数々の嫌がらせを仕掛ける可愛さとあざとさを武器に会社にモテるためだけに来ている佐々木チエ役の鶴田真由(51)の存在感はリアルで秀逸だった。

「『悪女(わる)』のコンセプトは、『働く女性へのメッセージ』です。社内の男女差別が当たり前の時代に描かれた原作、平成版ドラマともにその時代にピッタリマッチした登場人物やメッセージ性に多くの女性が共感し大ヒットしました。しかし、令和版には、いじわるな上司も同僚も登場しません。現実には令和になってもそんな人間はたくさんいる。しかし、舞台が大手企業ということもあり、最近うるさくなったテレビのコンプライアンス的な配慮もあるのかもしれませんが、毒のないコメディーに仕上がっている感じは否めません」(民放テレビドラマ制作関係者)

 今田演じる麻理鈴は、とにかく褒め上手。自己肯定感の低い同僚や上司が麻理鈴に褒められることで仕事にやり甲斐や生きがいを感じるというシーンが多くみられ、そこがいかにも令和版の良さという評価もあるようだが、そんな麻理鈴をつい歯がゆく感じてしまう昭和の“根性論者”の視聴者もいるようだ。ドラマはとても面白いが、どの世代にもいまいちピンとこないキャラ設定に原因があるのではないか。

 平成版では、出世を目指す麻理鈴だが結局会社を退社し、派遣社員として舞い戻り、憧れの人と再会するところで終わる。最後まで斬新で、この先の世の中を予見させるようなワクワク感があった。令和版の麻理鈴は、どんな着地をするのだろうか。

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