十月大歌舞伎は集客に苦戦…値段設定が高過ぎるせいか?
「盛綱陣屋」の陰の主役は子役が演じる小四郎だ。今回は10歳の中村梅枝で、セリフが多く、他の役者と合わせなければならない難役を見事に演じきっている。その分、菊五郎や萬壽たちの印象が薄くなるくらい。
菊五郎は他に、第1部「義経千本桜/川連法眼館」で、狐忠信。7代目菊五郎が出て義経をつとめていて、神性を感じさせる名演。神である義経の前では人間も狐も平等なのだ。
今月は「義経千本桜」からもうひとつ、「渡海屋・大物浦」が第3部にある。尾上松緑が銀平実は知盛、中村時蔵がお柳実は典侍の局。2人とも歌舞伎座では初めての大役だ。古典の大役が続く時蔵は、堅実に演じるだけではなく、風格も漂わせている。主人公は知盛だが、舞台に出ている時間は典侍の局のほうが長いせいもあり、時蔵が芝居全体をコントロールしている。
今月は4年ぶりに浅草に平成中村座が立った。注目は「助六曲輪初花桜」で、中村勘九郎が初めて助六をつとめる。揚巻は七之助で、3回目。大劇場での12代目と13代目の市川團十郎の助六が、祝祭感に満ち、神性があるのに対し、勘九郎の助六と七之助の揚巻は大衆的というか日常的。親しみが持て、圧倒はされないが、楽しかったなあという幸福感で芝居小屋を出た。
(作家・中川右介)


















