62年ぶり「鬼神のお松」で中村七之助が難役をこなす
8月の歌舞伎座は恒例の納涼歌舞伎。最近は「若手俳優の挑戦の場」というコンセプトが薄まったが、第1部の「牡丹燈籠」は、坂東巳之助と尾上右近を軸に若手が揃い競い合う。「納涼」を意識してか、ラストは本水を使うなど、新しい演出。右近が演じるのは「平凡な女」だが、これを自然に演じてしまうのが、見事。
第2部前半は昨年不慮の事故で亡くなった片岡亀蔵をしのぶ「らくだ」。兄の市蔵が亀蔵が得意としていた役をつとめる。主役は松本幸四郎と中村勘九郎。後半、小心者で幸四郎にふりまわされていた勘九郎が、酒を飲むと一変するのだが、そうなると分かっているのに、その変化に驚いてしまう。
続いて、本興行は62年ぶりという「鬼神のお松」。最初は田舎娘として登場するが、実は盗賊の頭で、そうかと思えば子どもがいる浄瑠璃の女師匠でもある役を、中村七之助がつとめる。この女は、いくつもの顔を持つが、彼女のなかでは矛盾していない。外見は違うが、性根はひとつという難役。
ストーリーも面白く、62年も上演されていないのが不思議だが、やれる女形がいなかったということだろう。七之助を得て蘇ったことを喜びたい。右近が演じていた盲目の武士が、重要な役なのだけど、見せどころがなく、それが上演が途絶えた理由のひとつか。


















