痛風だけじゃない!尿酸値が高いと怖い合併症がこんなにも
尿酸値が高いほど痛風になりやすい……これは、働き盛りのサラリーマンはもちろん、「飲む」「食べる」が大好きな男性諸氏なら誰でも知っていることだろう。だが、果たして自分事と捉えている人はどれぐらいいるだろうか。
国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、日本では痛風の患者数が年々増加し、推定100万人を突破した。ところが、尿酸値の高い人(尿酸値が7.0mg/dℓの状態)はその10倍の約1000万人を超えると推測されている。つまり、尿酸値が高くても9割は痛風発作を起こさず自覚症状がないため、どうしても日々のケアがおろそかになりがちなのだ。
実は、尿酸値が高いと怖いのは痛風だけではない。それ以上に心配すべきは、高血圧やメタボリックシンドロームを合併している人が多いことである。そのまま放置していると、痛風や尿路結石、腎臓病、さらには脳梗塞や心臓病などの大きな病気のリスクも高くなることが分かっている。健康診断や人間ドックで「尿酸値が高め」と指摘されたら、早めに予防策を打つことが肝心なのだ。
⇒尿酸値を下げるにはどうしたら良いの?
プリン体って何? どうして痛風になるの?
そもそも、尿酸値はどうして上昇してしまうのか、ご存じだろうか。
尿酸のもとであるプリン体は、人間の体内にもともと存在する重要な物質。プリン体は肝臓で代謝され、最終的には尿酸となって体外に排泄されるものの、尿酸が増え過ぎると血液中に尿酸がたまってしまう。この状態が続くと、尿酸が結晶化した尿酸塩が関節に沈着し、“風が当たっただけで痛い”と例えられるほどの激痛が、主に足の親指の付け根あたりに発作的に起こる急性関節炎を引き起こす……これが「痛風」だ。尿酸値が8.0mg/dℓの状態が続くと、痛風発作を起こすリスクが高まるという。
プリン体が体内で増える要因のひとつが、プリン体を含む食品や飲料の過剰摂取だ。一般的にレバーや白子、魚の干物などに多く、お酒ではビールに多く含まれている。しかもプリン体は、実はうま味のもとであるニボシ、干しシイタケ、カツオブシにきわめて多く含まれる。美味しいものには含まれるから、ついつい摂りすぎてしまいがちだ。
乳製品には尿酸を排泄する働きが
では、尿酸値を抑えるにはどうすればよいのか? 気をつけるのは4つ。
適正体重を維持して肥満を防止すること、そのためにはバランスの良い食事、ウォーキングやジョギングなどの適度な有酸素運動、お酒の呑み過ぎはもちろん注意である。肥満といっても外見だけではわからない、最近問題となっているは内臓脂肪が溜まる内臓脂肪型肥満である。内臓脂肪が減ると尿酸値も下がることがわかっている。
何かと忙しく、食生活がおろそかになりがちな季節である一方、お正月休みもある。お酒の機会も多い。プリン体の摂り過ぎを特に意識したい時期でもある。
誰にでもわかることだが、野菜や海藻やキノコ類は積極的に摂ること。肉類ではレバーやホルモンにはきわめてプリン体が多い。魚も意外に多いので、肉や魚は「ときどき」程度がよいだろう。
豚肉、牛ロース肉、羊肉、ウインナー、ベーコン、ウナギなどはプリン体が少ない。豆腐やそら豆、枝豆、かまぼこ、さつま揚げなどの魚類加工品にはきわめて少ない。鶏卵、うずらの卵、牛乳にはプリン体は含まれない。フルーツや飲料などに含まれる果糖(フルクトース)の摂りすぎにも注意したい。ただし、水分は積極的に摂ることが重要だ。
お酒では、ビールは発泡酒でもプリン体は多い。次いで多いのが日本酒や紹興酒。焼酎、ウイスキーなどの蒸留酒やワインは少ない。
尿酸値が高い人は、そんなちょっとしたことを意識した食生活が大切だ。
そんななか、尿酸値を下げる効果があることが最近知られてきたのは、牛乳やヨーグルトなどの乳製品だ。乳製品はプリン体が少なく、乳タンパク質のカゼインには尿酸を排泄する働きがある。しかも乳製品は、アミノ酸バランスの良い良質なタンパク源。アミノ酸を多く摂ると尿から尿酸の排泄が増えることがわかっている。
痛風以外にも恐ろしい合併症を引き起こす高尿酸血症は、いまや国民病の域。尿酸値を日頃の健康づくりのバロメーターにしたいものだ。
尿酸値啓発キャンペーンサイト
監修/宮崎 滋(一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長)
【提供】一般社団法人 日本生活習慣病予防協会