五木寛之 流されゆく日々
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連載10614回 樹木希林さんの遺言から <5>
(昨日のつづき) このところ世の中の話題は、まず「健康」。そして次に流行ったのが「老い」という問題だった。 そうなれば、「老い」の後は、「死」ということで、このところ「死」が大話題だ。 し…
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連載10613回 樹木希林さんの遺言から <4>
(昨日のつづき) 〈103 世の中をダメにするのは老人の跋扈。時が来たら、誇りを持って脇にどくの〉 世の中をダメにするのは青年の失敗ではない、と希林さんは言う。たしかにその通りだ、と、うなずくと…
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連載10612回 樹木希林さんの遺言から <3>
(昨日のつづき) <065 戦争って、自分のすぐそばの人たちとの戦い> これは卓抜な言葉だ。 私たちは戦争といえば、すぐに米ソの対立とか、第2次世界大戦とかを考える。しかし、戦争は日々、私た…
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連載10611回 樹木希林さんの遺言から <2>
(昨日のつづき) 『樹木希林 120の遺言』のページをめくると、いたるところで立ち止ってしまう。 ハッとする言葉や、なるほどとうなずくところが随所に出てくるからである。 注目すべきは、この一…
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連載10610回 樹木希林さんの遺言から <1>
『樹木希林 120の遺言』(宝島社刊)という本を書店で見て、びっくりした。四六判のずしりと重い本格的な本だ。奥付けまで入れると300ページもある。カバーを外してみて、本体の造本がしっかりしていることに…
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連載10609回 歌いながら歩いてきた <5> ─MYミュージックBOX出来!─
(昨日のつづき) 今度の『ミュージックBOX』には、活字本が2冊はいっている。歌詞と作品についての解説で、アンソロジストの濱田高志さん、アーカイヴァーの鈴木啓之さん、そしてリダークタルの立花莉菜さ…
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連載10608回 歌いながら歩いてきた <4> ─MYミュージックBOX出来!─
(昨日のつづき) こんどの<ミュージックBOX>は、大きく分けて5部構成になっている。 CDが4枚セットで、DISC1から4まで。 DISC1には『青年は荒野をめざす』から始まって19曲を…
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連載10607回 歌いながら歩いてきた <3>─MYミュージックBOX出来!─
こんどの『ミュージックBOX』には、私のごく初期の歌の仕事が沢山つまっている。 1950年代後期のCMソングのなかから、何篇か拾って収録したのもその一つだ。私自身もほとんど忘れかけていた半世…
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連載10606回 歌いながら歩いてきた <2> ─MYミュージックBOX出来!─
(昨日のつづき) 敗戦から引揚までの日々について、語るのは難しい。こんな苦労をいたしました、と同情をそそるような話はいやだし、といって面白おかしく喋るには重すぎる体験だからである。 しかし、そ…
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連載10604回 養生に定説はあるか <5>
(昨日のつづき) 今日は雨。空気が湿っていると、なんとなく呼吸が楽なような気がする。ふと半世紀以上前の、大学時代の授業のことを思い出した。 ロシア語の教授は、横田瑞穂先生だった。 その日は…
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連載10603回 養生に定説はあるか <4>
(昨日のつづき) 私自身、いまさまざまな身体上の問題をかかえている。 大半は加齢というさからいがたい自然の結果と言っていい。 人間の体は、ほぼ50年の耐久期限をめやすに作られているらしい。…
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連載10602回 養生に定説はあるか <3>
(昨日のつづき) <転ばぬ先の杖> などと昔からいう。たしかに転倒というのは高齢者にとって最も危険なことである。 ふだん元気だった人が、何かのはずみで転んで、寝たきりになってそのままという例…
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連載10601回 養生に定説はあるか <2>
(昨日のつづき) 先日、ある新聞社系の週刊誌に、有名な医学者のかたの記事が連載でのっていた。 その先生は、とくにガンの専門家で、すぐれた実績を残し、ファンも多い有名な方だ。 その記事で、食…
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連載10600回 養生に定説はあるか <1>
健康法という言葉が、どうしても好きになれない。健康、という表現に首をかしげるところがあるのだ。 健康は良いことだ、人は健康でなければならぬ、といった押しつけを感じるのである。 そこで、ずっと…
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連載10599回 去りゆく人びとの影 <5>
(昨日のつづき) 弔辞というものは、薄墨で和紙に書くものだといわれて、あわてたことがあった。『小説現代』の編集長だった三木章さんの告別式に参列したときのことである。 三木さんは私の新人時代の産…
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連載10598回 去りゆく人びとの影 <4>
(昨日のつづき) 先週末は『中央公論』誌の締め切りだった。<一期一会の人びと>という連載の国内篇の4回目である。 一期一会、という言葉は、一生に一度の出会い、というだけの意味ではない。生涯ただ…
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連載10597回 去りゆく人びとの影 <3>
(昨日のつづき) ふと気がつけば、かつて一緒に麻雀をしたり、旅をしたりした仲間たちのほとんどが世を去ってしまった。 「お淋しいでしょう」 と、憂い顔で気づかってくれる人が少くないが、これが案…
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連載10596回 去りゆく人びとの影 <2>
(昨日のつづき) 故・長部日出雄さんとの最初の出会いは、吉行淳之介さんとの対談の場だった。 当時、吉行さんは「週刊アサヒ芸能」で、連載対談をやっていたのだ。<吉行淳之介の軽薄対談>とか、そんな…
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連載10595回 去りゆく人びととの影 <1>
つぎつぎと訃報が相いつぐ。 堺屋太一さんが亡くなった。私は堺屋さんとは一面識もないが、「団塊の世代」という言葉の生みの親だということは知っている。「団塊の世代」。敗戦後の1947年から49年あた…
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連載10594回 人生後半の問題点 <4>
(昨日のつづき) 最近、ネガティヴな未来予測の本を上回る勢いで、<楽観的世界観のすすめ>的なポジティヴ本が読まれているらしい。 念のために話題の本を2、3冊読んでみた。なるほど、物の見方にはい…