五木寛之 流されゆく日々
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連載11948回 自分への暑中見舞 <5>
(昨日のつづき) きょうは文春本誌のための座談会。 『昭和万謡集』編纂作業の一環としての、意見交換の会である。 藤原正彦さん、片山杜秀さん、内館牧子さん、酒井順子さん、ジュディ・オングさん、…
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連載11947回 自分への暑中見舞 <4>
(昨日のつづき) 今週の『サンデー毎日』がおもしろい。 自分がささやかな連載をやっている雑誌をほめるのはナンだが、読むところがいくつもあった。 最近の週刊誌は、どうも羊頭狗肉というか、広告…
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連載11946回 自分への暑中見舞 <3>
(昨日のつづき) 雑誌『文藝春秋』で準備中の『昭和万謡集』は、昭和の<忘れえぬ曲><時代を象徴する歌>を選ぶ催しだ。不肖、私もスタッフの一員として参加している。 ちかぢか有識者を招いての座談会…
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連載11945回 自分への暑中見舞 <2>
(昨日のつづき) 悪いことは重なっておきるものだ。 これが私のモットーである。一つ何か厄介な問題が発生すれば、すぐに続いてさらに面倒なケースがおきることが多い。 逆に良いことは、それほど続…
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連載11943回 昭和戦後の歌をふり返る <5>
(昨日のつづき) 私が40代の頃のことだ。 ある新聞社に頼まれて大阪の美術館へいった。フランスの有名な近代画家の個展が大話題になっていた時のことだ。 その美術館は丘の上の高台にあった。壮麗…
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連載11942回 昭和戦後の歌をふり返る <4>
(昨日のつづき) こうして戦後から現在までの歌を展望してみると、あらためて昭和は歌の時代だったんだなあ、と思われてくる。 戦前、戦中の歌でも、まだうたわれている歌は少くない。しかし、昭和20年…
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連載11941回 昭和戦後の歌をふり返る <3>
(昨日のつづき) 『青い山脈』といっても、歌のほうはともかく、原作小説や映画については知らない世代もあるかもしれない。 あれは昭和24年頃のことだったと思う。私は学区制という戦後の政策で、地元の…
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連載11940回 昭和戦後の歌をふり返る <2>
(昨日のつづき) 9月1日付けの『産経新聞』15面特集に、<読者2000人が選んだ昭和の名曲>(歌謡曲・演歌部門/世代別)というリストが掲載されていた。 30代以下から80代以上まで、それぞれ…
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連載11393回 昭和戦後の歌をふり返る <1>
<昭和100年>への予震が少しずつ露わになってきた。 きょう、見るともなしにテレビを観ていると、昭和を代表する歌手のベストテンを選ぶ番組をやっていた。10位から順々に上位にむけて歌手の名前が発表さ…
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連載11938回 戦時中の夏の記憶 <5>
(昨日のつづき) 当時の小学生、中学生の愛読書は、マンガよりも少年読物の一連の小説だった。 人気があった作家の名前を幾人か思い出すことができる。 佐藤愛子先輩の父君にあたる佐藤紅緑や、冒険…
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連載11937回 戦時中の夏の記憶 <4>
(昨日のつづき) 戦争の時代、ほとんどすべてのジャーナリズムは国民の戦意発揚のために献身した。 いま大リーグの大谷選手のニュースが毎日ながれるように、メディアは戦況を大本営報道部と足並みそろえ…
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連載11936回 戦時中の夏の記憶 <3>
(昨日のつづき) 戦時中の軍歌、戦意昂揚歌のたぐいには名曲が多かった、といえば誤解を招きかねないだろう。 しかし、それは疑いもない事実である。軍国主義の風潮のなかで、相当の感情的バイアスがかか…
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連載11935回 戦時中の夏の記憶 <2>
(昨日のつづき) 昭和16年、それまでの小学校が国民学校と名前が変った。 小学生から国民学校生徒になったのだ。その年の12月8日に太平洋戦争が始まった。大東亜戦争と称される大戦である。 勇…
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連載11934回 戦時中の夏の記憶 <1>
猛暑と豪雨が続いている。 ゲリラ気象というか、予想をこえた気象変動が報じられて、落着かない毎日だ。 私たち昭和ヒトケタ派の生き残りにとって、8月は何より戦争の記憶が色濃い。 新型爆弾と称…
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連載11933回 夏の夜には歌謡曲 <5>
(昨日のつづき) これまで何度も書いてきた話だが、戦後、北朝鮮で難民として抑留されていた時代のことだ。 中国などとちがって、なぜか北朝鮮では公的な引揚げ事業が行われなかったために、ピョンヤンな…
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連載11932回 夏の夜には歌謡曲 <4>
(昨日のつづき) むかし作曲家の遠藤実さんと対談をしたことがあった。 かぞえきれないほどのヒット曲を書いた人だが、風貌はどことなく実業家のような感じの作曲家だった。 左手の手首に数珠を掛け…
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連載11931回 夏の夜には歌謡曲 <3>
(昨日のつづき) 「むかし、こんな歌が流行っていてね」 と、若い人にうたって聞かせたら、いろいろ質問がでた。『白い花の咲く頃』である。 「白い花って、なんの花なんですか」 「さあね、要するに…
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連載11930回 夏の夜には歌謡曲 <2>
(昨日のつづき) ヒット曲でもツーコーラスの歌詞がうたわれることが意外に少ない、と書いたが、その逆もないではない。 昭和24年のヒット曲でロングセラーにもなった『長崎の鐘』。 〽こよなく晴れ…
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連載11929回 夏の夜には歌謡曲 <1>
古い歌謡曲や演歌の番組を視ていて残念なのは、3番まである歌詞のツーコーラスしか歌われないことだ。 ふつうは1番と3番をやって、2番目の歌詞をとばされることが多い。 放送時間の制限や、その他の…
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連載11928回 甲子園の民俗学 <4>
(昨日のつづき) 私たち昭和の子供は、戦争の時代に徹底的な軍事教育を受けた。ゲートルの巻き方から分列行進にいたるまで、少国民としての身体的訓練を体で学ばせられたのだ。 行進の際には堂々と胸を張…