『ゲット・バック』②帰れなかったからこそ美しい、挫折が生んだ70年の名盤
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アルバム『レット・イット・ビー』(1970年5月8日発売)⑧
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■『ゲット・バック』②
「ゲット・バック」。日本語に訳すと「帰ってこいよ」。
歌詞は「ジョジョ」「ロレッタ・マーティン」に「元いたところに帰ってこいよ」と呼びかけるというものである。
しかし「ゲット・バック」という言葉を歌詞の中の意味だけで受け取る必要など、まったくない。ビートルズファンはこの言葉に、もっと複合的な意味を感じ取ってきた。
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ロックンロールバンドにゲット・バック。ライブバンドにゲット・バック。そして、かつてのような4人の関係、とりわけ、ジョンとポールの蜜月時代にゲット・バック。つまり、世界中をブイブイ言わせていた、あの初期ビートルズにゲット・バック──。
もちろん、そんな「ゲット・バック計画」は完遂せず、録音翌年の1970年に入って、ビートルズは実質的に解散。4人はバラバラになっていくのだけれど。
でも、よかったような気もするのだ。
『ゲット・バック』を録音した69年初頭の時点で、初期ビートルズにゲット・バックしたとしても、音楽シーン激動の時代と合わなかっただろう。
何といっても、あの大規模野外コンサート「ウッドストック」が開催された年である。新しいロックへのうねりが起こっている。
レッド・ツェッペリンなどのハードロックが生まれ、ピンク・フロイドやキング・クリムゾンなどのプログレッシブロックも台頭しつつある。
そんな「重厚長大」への流れの中で、まさに「軽薄短小」な初期ビートルズへの回帰は、明らかに時代と合っていない。結局はローリング・ストーンズと同質化する羽目になったのではないか。
さらに初期への回帰は、あの「1970年の元ビートルズ」の創造性をも阻んだはずだ。
ジョンのアルバム『ジョンの魂』、ジョージの『オール・シングス・マスト・パス』という70年リリースの傑作は、ゲット・バック計画の失敗があったからこそ、生み出されたと言える。
ちなみにポールの同年のファーストソロ『マッカートニー』は、この2枚に比べると小粒だが、それでも名曲『メイビー・アイム・アメイズド』が入っているだけで、個人的には重要作だと言いたい。
つまり、ゲット・バック計画が頓挫したからこそ、メンバーの輝かしい70年、そして70年代が約束されたのである。
ゲット・バックしなかった4人、ゲット・バックできなかった4人による『ゲット・バック』──だからこそ、この曲は美しく、そしてどこか、そこはかとなく悲しい。
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