『トゥ・オブ・アス』冷め切った関係で美しくハモる二度と共に歌えない2人の業
- 印刷
- >> バックナンバー
- 今だけ無料
アルバム『レット・イット・ビー』(1970年5月8日発売)③
1曲目(無料)から読む
■『トゥ・オブ・アス』
アルバム『レット・イット・ビー』からジョンとポールのデュエットを2曲、紹介する。ビートルズももうすぐ解散。解散後、一緒に歌うことが二度とない2人によるハーモニーだ。
↓………ここから続き………
まずはアルバム冒頭の『トゥ・オブ・アス』。タイトルの「トゥ」(2)は、ポールの作った歌詞の意味としては、私=ポールと、その後に結婚するリンダの2人を表すらしいが、解散寸前という状況から、どうしても「トゥ(ジョンとポール)・オブ・アス(ビートルズ)」と聴こえてくる。いや、そう聴くべきではないか。
試聴リンクから見られるのは、映画『レット・イット・ビー』(70年)で、この曲が歌われるシーンだ。4人の顔の覇気のなさはどうだ。
そしてポールとジョンが、実によそよそしく、それでも長年の経験からか、結局それなりに美しくハモってしまうさまは、一種の哀愁すら感じさせるものである。
再生時間「1:22」からの大サビでポールが歌う歌詞は「君と僕には思い出がある。それは目の前に伸びる道よりも、ずっと長い思い出」。
もしかしたら、この歌の録音(69年)から57年も経ったにもかかわらず、ポールは、ジョンと歌った十数年間の方が長いと思っているかもしれないな。
■『ワン・アフター・909』
こちらも、ジョンとポールがずっとハモっている曲である。ビートルズ初期にレコーディングを試みられた古い作品でもある。
タイトルが微妙によく分からない。「9時9分の次の列車」か「909便の次(910便?)の列車」か。
洋楽を聴いていて、まどろっこしい数字表現に驚くことがある。有名なシカゴ『長い夜』(70年)の原題「25 or 6 to 4」=「午前4時の25~26分前」なんて、ストレートに「3時34~35分」でいいのにと思ってしまう。
「ゲット・バック・セッション」の狙いのひとつであったロックンロール回帰を体現する曲で、音源自体も、アップル・ビル屋上で行われた「ルーフトップ・コンサート」でのライブ演奏である。
しかし、初期のあのはちきれんばかりのロックンロールを聴いた耳には、何ともどんくさく聴こえてしまうのだ。
なぜだろう、シンプルなロックンロールなのに。いや、ロックンロールだからこそ、バンドの人間関係が直接的に現れてしまったのだと思う。
■「日本の新しい音楽1975~ "New Music" from 1975」発売!
スージー鈴木氏の大好評連載が書籍化されました!Amazonでも好評発売中です!
■好評連載「沢田研二の音楽1980-1985」をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)発売中


















