『レット・イット・ビー』①一瞬ミスも…ピアノ・ロックの原点に潜むブルースの残り香
- 印刷
- >> バックナンバー
- 今だけ無料
アルバム『レット・イット・ビー』(1970年5月8日発売)⑨
1曲目(無料)から読む
■『レット・イット・ビー』①
いよいよこの曲である。『イエスタデイ』(65年)、『ヘイ・ジュード』(68年)と並ぶ人気曲で、かつ、これら3曲の中で、もっとも深みと渋みを併せ持ち、ビートルズのまさに到達点と断言できる一曲だ。
ジョージの離脱など、混乱続きだったゲット・バック・セッションも、この曲を生み出せたという一点において、成功と言っていいだろう。
↓………ここから続き………
アレンジの主役はピアノである。イントロはピアノだけ、そこに歌が乗り、その他の楽器も、順繰りに乗っていく。つまり楽曲の骨格はピアノがしっかりと貫いているのだ。
和久井光司『ビートルズ以後のモダン・ポップ完全版』(河出書房新社)
は、グランドピアノをバンドのシンガーが弾き語る姿を世界に知らしめたのは、映画『レット・イット・ビー』(70年)だった、と書いている。
そう。今や、ピアノとロックバンドという組み合わせに違和感を持つ人など、そうはいないと思うが、「ピアノ・ロック」は『レット・イット・ビー』から始まったと言っていいのだ。
ピアノから始まって、徐々に徐々に盛り上がっていくアレンジも、そして録音もバッチリである。
ビリー・プレストンによるオルガンは相変わらず最高だし、途中に出てくるブラス・セクションも、このアルバムにおける他の曲のストリングスほど出しゃばらない。
鉄壁のアレンジ、それを見事に録音・編集した技が相まって、ビートルズは到達点に達することができたのだ。
あと、このボーカルは聴かれ過ぎて、もうピュアに判断されにくくなっていると思うので、あえていえば、ここでのポールの歌は、まさに名唱である。
驚くべきことに、元々は、もっとブルージーな曲だった(その上、歌詞に黒人運動の指導者=マルコム・Xが出てくる)。そこからだんだんと教会音楽風に仕立て上げられていったのだが、それでもポールの歌い方に、ほのかに残ったブルース感覚が、全体的に実にいいアクセントになっているように思う。
と褒めてばかりいても何なので、本連載らしく、ちょっとだけ揚げ足を取れば、試聴リンク再生時間「3:00」のところでピアノがミスをしている。本来「ラ・ド・ミ」(Am)を押さえるべきところを、その横の「シ・レ・ファ」を一瞬押さえてしまっているのだ。揚げ足を取れるのは、そこぐらいかな。 (この項つづく)
■「日本の新しい音楽1975~ "New Music" from 1975」発売!
スージー鈴木氏の大好評連載が書籍化されました!Amazonでも好評発売中です!
■好評連載「沢田研二の音楽1980-1985」をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)発売中


















