がん患者にとことん寄り添ったサイトと小冊子誕生~ファンケル

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がん治療開始時からのケアサイトと冊子「Nagomi time」

 ファンケルでは「Nagomi time」と名付けた、がん治療中の外見の変化やケアの方法をまとめた総合情報サイトの開設と小冊子の配布を、2025年1月20日から開始。

 早くもユーザーから高い評価を得ているという。そこで、その取組みについて探ってみた。

がん患者に欠かせない「アピアランスケア」

 国立がん研究センターの調べによると一生のうちに日本人が、がんと診断される確率は2023年時点で男性62.1%、女性48.9%。どちらも約2人に1人という高い数値に上っている。

 がんは日本人にとって特別な病気ではない、身近な国民病といっても決して過言ではない。

 たしかに、がんは死にも繋がる恐ろしい病気だが、近年の医学の進歩により適切な治療を受けさえすれば最悪の事態を避けられることも多くなってきた。しかし、その一方でがん治療に伴って起こる患者にとっては切実な問題がある。

 というのは、厚生労働省の調査によると、抗がん剤治療・薬物療法・外科手術を受けたがん患者の約6割が「治療によって外見が変化した」と回答。特に髪やまゆ毛、まつ毛の脱毛症状は痛みやかゆみよりも外見の変化に関する苦痛度のほうが深刻であることが明らかになっているからだ。

 がんや、がんの治療によって外見が変化しても、その人らしく社会生活を送れるよう患者さんを支えるケアが「アピアランス(外見)ケア」であり、その必要性を指摘する声が患者本人はもとより医療従事者からも年々高くなっている。

 とはいえ、実際にはアピアランスケアに関する情報は決して多くなく、その提供方法に課題があることも事実なのだ。

がん患者のQOL向上をバックアップ

 今回のファンケルによる総合情報サイトの開設と小冊子の配布は2022年12月からキリンホールディングスが中心となって取り組んできた、がん患者のアピアランスケアに関する課題解決に向けてのプロジェクトの一環。

 年々多様化するがん治療中の外見の変化に関する情報やケアの方法、助成金制度など、万が一がんになったとしても自分らしく日常を過ごせる包括的な情報を提供し、女性はもちろん、男性がん患者のQOL向上を支援するサービスだ。

 サイトでは自分らしい社会生活を送るためのヒントになる治療中の肌、爪、髪やメイクなどに関する簡単なケアの方法やちょっとした着こなしのコツやポイントなど、快適にオシャレに過ごせるスタイリングを提案。

 一方、小冊子では外見の変化をケアするだけでなく、普段通りの日常生活に近づけるために知っておくと便利な情報なども紹介。年齢や性別、治療の内容に関係なく、誰にとっても役立つ内容となっている。

 さらに小冊子とサイトの内容が連動、小冊子内で紹介している二次元コードを読み取るとサイト内の動画などに遷移して、より詳細なケアについて確認することができるというのも見逃せない点といえるだろう。

ファンケルとキリングループがコラボ

 今回のプロジェクトはいったいどんな経緯で誕生したのか、その背景をファンケル経営企画本部メディカルコーディネートグループの秋山裕香さんはこう説明する。

「創業以来、世の中の不を解消してきた当社では、これまでアピアランスケアに関してもメイクセミナーを実施するなどの活動を実施していました。 その中で、データでは見えない患者さんの外見に関するお悩みについて知り、『肌がこんなに荒れるとは知らなかった』や『治療中は、肌が敏感になって困った。どうしたらいいかわからなかった』と言った声を聞く機会が増えました」

「患者さんからは、どんなケアをしたらよいのか、助成金の情報が知りたい、治療中も普段通りの生活と同様に過ごせないか、などアピアランスケアに関する情報をまとめて入手できないかというお声をいただきました。そこで、医療従事者や患者さんに向けた情報提供に関する知見を持つキリングループがサポートすることで患者さんの悩みの解消を目指した取組みができるのではないかと考えました」

外見だけではなく内面のトラブルにも対応

 今回のサイトと小冊子を作るうえで、担当者が常に心がけていたことがあるという。

 その点について、秋山さんとともにプロジェクトに参画した経営企画本部副本部長・榎並正泰さんに聞いた。

アピアランスケアはその名の通り、がん治療に伴って生じる外見の変化をケアするものですが、実はそれだけではありません。髪の毛が抜けたり肌が荒れたりすることで以前のような日常生活が送れなくなり、周囲の視線が気になって外出を控えたりするなど心理的なトラブルに見舞われる方も少なくないのです。そこで今回は外見のケアはもちろん、生活を楽しむための情報やアイデアを盛り込むようにしたのです」

 確かに榎並さんの言葉通り、サイトにも小冊子にも、がん患者にとって有益な情報やアドバイスが随所に盛り込まれている。

 例えば食事について。日頃、主婦として家族の食事の用意をしている人ががんになると投薬後、体がだるくて食事を作るのがしんどくなったり、あるいは薬の影響で炊き立てのご飯の匂いを受け付けなくなったりすることもあるという。そこで、管理栄養士のアドバイスのもと、少しの工夫で食べやすくなり、誰もが簡単に作れるメニューを紹介している。

 また、各都道府県や市町村にはがん患者やその家族が利用できる助成金など公的支援制度があるが、いざとなると探すのが大変だ。その点、サイトにも小冊子にもサイトのリンクだけではなく、問い合わせ窓口の課名や電話番号など詳しい情報を掲載している。

 これを見てもいかに患者に寄り添って作ったサイトであり、小冊子であることがよく分かるだろう。

自分らしく生活するための一助になれば

 プロジェクトには、日々がん患者に向き合っているアピアランスケアの専門家が何人も監修者として参加している。

 その1人、西澤綾先生(がん・感染症センター 都立駒込病院皮膚腫瘍科医長 アピアランスケアセンター副センター長)は、「患者さんからよく質問されることをより多く取り入れ、有効なテーピングの方法や保湿剤などの外用方法、メイク、洋服の工夫や食事など幅広く、日々の生活にすぐに活用いただけることを念頭に監修しました」

「アピアランスケアはがん治療中においても生活の質を落とさず、自分らしい生活をするために今後ますます必要とされる分野です。本冊子やサイトががん治療中も自分らしく生活するための一助となればと思います」とコメントしている。

 ファンケルでは今後サイトをさらにバージョンアップ、自分たちだけが発信するのではなく患者自らが参画できるような仕組みを構築していく予定だという。

「ここでは日々のスキンケアやメイク、食事、運動など幅広い内容にこだわって取り上げています。これから治療される方や治療中の方、そのご家族、医療に従事されている方など多くの方に活用していただければ嬉しいですね」(前出・秋山さん)

■提供:nagomi time(ファンケル)

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