五木寛之 流されゆく日々
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連載11611回 暗愁のゆくえ <5>
(昨日のつづき) いま、ロシアについて語ることは、きわめて困難な状況にあると言っていいだろう。 それは19世紀ロシア文学に象徴されるロシアへの深い共感と、現在のロシアの政治的行動への強い反撥と…
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連載11610回 暗愁のゆくえ <4>
(昨日のつづき) 井筒俊彦氏の『ロシア的人間』が弘文堂から刊行されたのは1953年の2月である。私がまだ大学1年生の頃だ。 しかし実際に執筆にかかったのは、それより5年ほど前のことだったという…
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連載11609回 暗愁のゆくえ <3>
(昨日のつづき) 『ロシア的人間』の著者である故・井筒俊彦氏の半世紀前の言葉は、まさにロシアがウクライナに侵攻し世界を震撼させた近年の現状を予告しているかのようだ。 そして誰もがロシアについて語…
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連載11608回 暗愁のゆくえ <2>
(昨日のつづき) 書評というのは難しい仕事だ。作品によりそって説明しなければならない。自分の意見も述べなければならない。そしてその上、まだ未読の読者にぜひその本を読んでみたいという気持ちをおこさせ…
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連載11607回 暗愁のゆくえ <1>
暗愁、という言葉がある。故・小島憲之さんの『ことばの重み』(新潮新書)の中で丹念に説明されているが、どうやら古代に中国からさまざまな文物にまぎれこんで渡来したものらしい。 哀愁でも、旅愁でも、郷…
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連載11606回 歩くための技法 <5>
(昨日のつづき) 歳をとると、どうしても姿勢が悪くなる。前かがみになって、小股でチョコチョコ歩きになりがちなのだ。 歩く姿勢を良くするにはどうすればいいか。やたらと胸を張ってシャチこばったとこ…
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連載11605回 歩くための技法 <4>
(昨日のつづき) いろんな解説書に、歩き方の基本としてこんなことが説かれている。 <足の運びは、踏みだした足を踵から着地するのが基本> 要するにスリ足はいけない、というわけだ。前方に振り出し…
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連載11604回 歩くための技法 <3>
(昨日のつづき) 飛行機やクルマ、鉄道などを利用して移動しても大変だった行程を、紀元前数百年前、ブッダは徒歩で移動したのだ。 そして晩年、その旅の途上で食中毒で倒れる。彼が行き倒れた雑木林を訪…
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連載11603回 歩くための技法 <2>
(昨日のつづき) ブッダが偉い人であったことは、よくわかっている。小国といえども支配者の地位を捨て、放浪の旅にでた。出家したわけではない。なにか新しい人生を求めて、放浪の旅に出たのだ。出家ではなく…
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連載11602回 歩くための技法 <1>
私たちは、ふだん何気なく歩いている。 歩き方を教わったわけでもないし、自分で工夫するわけでもない。 大部分の人は、ごく自然に、無意識に歩いているのだろうと思う。 べつにそれで不自由はなく…
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連載11601回 『面白半分』という時代 <5>
(昨日のつづき) 『面白半分』みたいな雑誌が存在するということは、その社会が多様性に富んでいるということだ。余裕がないと一色になる。戦時中のこの国がそうだった。あの時代に『面白半分』などと称したら、…
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連載11600回 『面白半分』という時代 <4>
(昨日のつづき) 『面白半分』の編集長をつとめて、私のやったことといえば『腰巻大賞』を作ったくらいだろう。 かねがね新刊のオビを厄介に思っていたのだ。だが編集者に「オビはつけないでくれませんか」…
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連載11599回 「面白半分」という時代 <3>
(昨日のつづき) 西洋人のモノと日本人のモノのちがいを、<日本人のモノは構造的でカザリが多い>というのは、具体的にどういうことだろうか。 金子光晴さんの『随筆』ならぬ『随舌』は、とどまるところ…
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連載11598回 「面白半分」という時代 <2>
(昨日のつづき) 『面白半分』誌の創刊1号と、廃刊臨終号を送ってくれたのは、私の郷里の八女市のMさんである。 Mさんは長年にわたって、いろいろと私に貴重な資料をみつけては送ってくださっていて、八…
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連載11597回 「面白半分」という時代 <1>
むかし『面白半分』という雑誌があった。 「ハーフ・シリアスということだな」 と、吉行淳之介さんは言っていた。 面白さ一辺倒ではない。さりとて真面目全部でもない。中途半端を最初から打ち出した…
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連載11596回 遅かれ早かれ散る桜 <5>
(昨日のつづき) 生きているだけで意味がある、とは、私が50年以上、言い続けてきていることだ。 「でも、生きてるだけじゃ――」 と、不満げな若い人からの反論も少くない。 「生きる意味、って…
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連載11595回 遅かれ早かれ散る桜 <4>
(昨日のつづき) 私もときどき、夜、眠れないことがある。「明日は午前中から仕事だから、早く寝よう」とベッドに入るが、なかなか眠りが訪れてこない。 そんなとき、先に逝った仲間たちの顔を思い出し、…
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連載11594回 遅かれ早かれ散る桜 <3>
(昨日のつづき) 坂本龍一さんが亡くなった。 <桜散る 昭和も遠くなりにけり> 坂本さんは大江健三郎さんとは別な意味で、知のリーダーの一人だった。なにか時代の扉がグルリと一回転したような感じ…
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連載11593回 遅かれ早かれ散る桜 <2>
(昨日のつづき) 〽貴様と俺とは同期の桜 そんな歌を子供までがうたった時代があった。 〽咲いた花なら散るのは覚悟 見事散りましょ国のため と、続く。オレも中学生になったら、少年航空兵か予科…
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連載11592回 遅かれ早かれ散る桜 <1>
先月からの喉の違和感がまだ消えない。消えないどころか、ますます抵抗が大きくなってくるようだ。 ひょっとしたら食道か喉頭のガンかも、という不安が頭をよぎる。それでも病院で診てもらおうとしないのは、…
