4日後に閉館するホテルで人探しという奇妙な依頼「月下の盤」睦月準也著
「月下の盤」睦月準也著
ホテルが好きだ。まぁあまり嫌いな人はいないだろうが、私は高嶋政伸さん主演のドラマ「HOTEL」を子どもながらに楽しみに見ていたし、仕事や旅行でホテルにチェックインするだけで非日常感に気分が上がる。本著はそんな私の今イチ押しのホテルミステリーである。
元刑事である探偵の元に人捜しの依頼が舞い込む。捜す相手の名前はゴウダトオル。唯一の手掛かりは4日後に閉館が決まっている東亜ホテルを利用している客であるということ。居場所が分かっている人捜し。一見簡単そうに見えるこの奇妙な依頼を受けた探偵は、指定されたホテルで捜索を始めるが一向に見つからない。更にホテル内で発生した事件に巻き込まれ、窮地に追い込まれる探偵。100年の歴史あるこのホテルが閉館した時、手掛かりは完全に失われる。果たして探偵は謎多き人物ゴウダトオルを見つけだすことができるのか。
居所が分かってる人捜しなんて簡単じゃん、5ページでも終われる話かなと思いきや、読んでるこちらの予想を次々と裏切り、どんどん「謎」という霧の中に埋もれていくゴウダトオル。485ページのしっかり長編である。
本著において、探偵と同格で主人公と呼んでもよい存在がある。舞台となる「東亜ホテル」だ。老舗で由緒あるこの巨大ホテルにはバーラウンジ、服飾雑貨やジュエリーショップなどの店舗テナント、プールやVIPルームなど、さまざまなおもてなしが用意されている。終始このホテル内で探偵がゴウダトオルを捜し続けるのだが、ホテルの描写がとにかく良すぎて読んでいてどんどんこのホテルが好きになっていく。不思議な感覚のミステリーだ。
このホテルが舞台だからこそ出てくる人物や展開も予想ができない大きなものになっていったし、終盤で通常のミステリーなら終わってもよい解決の更に向こう側にある「真の解決」へとたどり着けたと思う。気持ちの良い読書体験だった。
ちなみに私は今年家族旅行でホテルに泊まった時、オートロックの部屋にカードキーを置いたまま外出し、帰って部屋に入れなかった。ホテルの中で事件が起きたあの緊張感も読んでいて思い出せた。
ホテル好き、ミステリー好きにオススメな一冊だ。 (早川書房 2530円)



















