ホーソーンの性格の悪さを上回る推理力にしびれる|「命取りのエピソード」アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳
「命取りのエピソード」アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳
今まで本を読んできた中で最も多いジャンルは、ミステリーだ。好きが高じて自分もミステリー小説を出せたようなものだ。事件自体に引かれることも多いが、事件を解決する「探偵役」に心を打ち抜かれたことも多々あった。ホーソーン&ホロヴィッツシリーズのダニエル・ホーソーンは私の大好きな探偵のひとりだ。
まずシリーズについて説明しよう。主人公のひとりはこの小説の著者であるアンソニー・ホロヴィッツ。小説家であり、脚本家でもある彼は数々の名作を実際に生み出している。そんな彼に近づいてきたのが元刑事のダニエル・ホーソーン。ホーソーンは「自分が今抱えている事件を小説にしてほしい、自分自身を主人公にして」という荒唐無稽なお願いをホロヴィッツに頼む、流れで2人で事件を捜査していくのだが……。と、ここまでがシリーズ1作目「メインテーマは殺人」のあらすじだ。
シリーズ6作目の本作ではこの「メインテーマは殺人」が作中の世界でも出版されており、評判も上々。そこで実写映画化の話がホロヴィッツの元にやってくる。ところが蓋をあけてみると脚本で原作にないシーンやセリフや主張が足されているし、プロデューサーや監督、俳優陣もくせ者ばかり、監修でしれっとホーソーンも入ってるがいきなり脚本家をブチ切れさせる。そんなピリピリした撮影期間の中、ホーソーン役を演じていた俳優が殺されてしまう。ホロヴィッツとホーソーンはまたしても殺人事件の捜査をしていくのだが、やがて思いがけない秘密と真相にたどり着いていく。
ホーソーンのどこが好きか、それはとにかく性格が悪いところである。相手の一番言われたくないところはすぐ察知できるし、ずけずけ言ってくる。ただこの性格の悪さを上回る推理力、ここがしびれるポイントだ。対照的に相棒のホロヴィッツ、彼は普通に凄い作家のはずなのに、この世界の中では凄くポンコツだ。そこをホーソーンにしこたまいじられる。自分で自分をよくここまでダサく書けるなと感心すらする。2人のこの関係性が見ていて痛快なのだ。
今作を読んでから1作目を読んでも問題ない。映画、小説業界のリアルも知れて事情通にもなれるミステリーだ。 (東京創元社 1430円)



















