著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

最後まで緊張感ある展開の連続だった“夢落ち”|「終着駅で待ち合わせ」真門浩平著

公開日: 更新日:

「終着駅で待ち合わせ」真門浩平著

 東京創元社。さまざまなジャンルの小説を出している出版社だが特に国内外のミステリー、SFに強いイメージがある。年に1回、自社の敷地を開放し「創元初夏のホンまつり」なるイベントも開催している。東京創元社の本が新旧問わず並び、サイン本も買える。僕の中ではサマソニ、フジロックと並ぶ三大夏フェスだ。その祭りで売り子をしていた営業のQさん(本当のイニシャルなのだが珍しいしミステリーすぎる)に新人のミステリー作家さんでオススメいますか? と聞いたところ即答で返ってきた名前が真門浩平さん。本書はそんな真門さんの第2短編集である。

 デビュー短編集「ぼくらは回収しない」もハイクオリティーで話題になっていたのだが、本作の噂や好評も各所で聞く。中でも「夢落ち」という短編が凄いらしいと。いや夢落ちってマンガとか映画とかでやったら今や炎上しちゃう禁じ手でしょ?なのにこの絶賛、気になる。まんまと読んでみた。

「夢落ち」はストレスで過食気味になっていることを悩む女性、由佳が主人公。彼女は、自分の夢を意識的に操ることができる「明晰夢」を研究する男、向井と出会う。彼の指導により夢の中でたくさん食べ、現実の自分の健康を損なわない術を得た由佳。ある日向井の教え子たちと行った小旅行中に殺人事件に遭遇する。この事件の犯人、そして夢が事件にどう関わってくるのか、最後まで緊張感ある展開の連続で非常に楽しめた。これは世間の評判が良いのもうなずける。

 この話以外でも、通年で雨が降り続ける町に住む子供たちがある謎に向き合う「天森町は今日も雨」も個人的に好きだったし、収録されている5編それぞれ日常系から殺人まで幅広く楽しめる。どの話も謎に対しての解が非常に論理的で、人間の優しさやもろさを静かに伝えてくるのも魅力だ。教えてくれたQさんに感謝である。

 ちなみに私も学生時代、明晰夢にハマっていて悪夢から強制脱出したり(これをやって夢から覚めると頭がバグったかのように痛くなった)限りなく理想の現実に近い夢を見られたりした。今はもうできないが、この原稿が完成しているのが夢の中でないことを心から祈っている。

 ミステリーの新進気鋭、味わいたい方はぜひ。 (東京創元社 1870円)

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