「翔んで埼玉」映画監督・武内英樹インタビュー 酔いが回ると画が浮かんでくる「斬新なアイデアの源泉は酒にあり」
阪神タイガースが勝利した時のお酒は格別です。最近、毎日お酒がおいしくて。チームが弱かった時も負けを忘れるために飲んでいましたが、おいしさが違います。
朝、撮影に寝坊したりと、お酒の失敗談はたくさんあります。助監督から何度も電話がかかってきて「監督、今どこですか?」って慌てているんです。スタジオでエキストラが200人ぐらい待っていて、みんな何もできないわけですから。「ごめん、まだ寝ていた」って謝りました。ビールやウイスキー、焼酎を計20杯ぐらい飲み、ほぼ毎晩深酒です。お酒を飲むと、いいアイデアが降ってきます。神経が研ぎ澄まされるんです。
「のだめカンタービレ」の演出もお酒から生まれました。原作では千秋先輩っていう指揮者が「のだめ」をボッコボコに殴るんですが、さすがに実写でやったらマズい。どうやったら原作を乗り越えられるかなと考え、上野樹里チャンを「人形」にしました。「のだめ人形」ならどれだけブン殴っても問題ない。面白いんじゃないかなと思ったら、意外とウケたんです。「翔んで埼玉」の時は脚本家やプロデューサーと飲みながら、「千葉と埼玉が川をはさんでお互い罵り合ったら面白いね」とバカ話をしていたら、だんだん酔いが回ってきて画が浮かんできたんです。「千葉の有名人は誰がいる?」「埼玉は?」って調べると、「えー、竹野内豊クンって埼玉育ちなの」って感じでキャスティングを決めました。
当時はフジテレビの社員でしたが、世間からぶっ叩かれそうな作品の企画なんて通らないだろうと思っていたら「やっていいよ」って言われ、引き下がれなくなった。公開したら埼玉県で刺されるかもしれないと思い、県の職員におそるおそる「実写化したいのですが……」と相談したんです。そしたら「いいんじゃないの。大丈夫」って。「埼玉県民は全然怒らない。みんな自覚症状あるから。むしろ埼玉にスポットライトが当たるのはうれしい」って言ってもらい、もろ手を挙げて喜んでくれました。所沢市や埼玉県人が多い池袋とか、夜間の映画館で上映が終了した瞬間、スタンディングオベーションが起き、初めてそんな光景を目にしました。それで間違って「日本アカデミー賞」を取っちゃった。逆にアカデミー賞、大丈夫かって思いましたよ。
埼玉県の大野元裕知事に会った時も、「埼玉ポーズ」をとりながらノリノリで「次回作はいつですか?」って聞かれました。旅行で宮崎県を訪れた際、たまたま洋食屋で一緒になった河野俊嗣知事からは「観光PRをしてもああいう映画にはかなわない。ぜひ、『翔んで宮崎』をやってくれませんか」と頼まれました。でも興行的には、ある程度の人口が必要なんです。埼玉じゃなければ成り立ちませんでした。


















