(50)ロンドン・パブ・マラソンの誘惑
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25年前、初めてイギリスへ行った。イーストミッドランドのラフボローという小さな街だ。近くの大都市というと、サッカーでも名前が出てくるレスター、ノッティンガム、コヴェントリーなどがある。
現地の大学で学んでいた日本人に案内してもらって、それらの街を回らせてもらった。ノッティンガムでは、現地で流行っていたマーシャルアーツのナショナルコンペティションを見学したりもした。
鉄道は平気で運休するので、バスや現地の人の自家用車に乗せてもらった。ロンドンで走っている赤い2階建てのバスが、羊や牛のいる牧草地を抜けて走るのが、なんだか不思議だった。芝のグラウンドでは金髪や赤毛の、まだ小学校へ上がる前くらいの男の子たちが、サッカーボールを追い回していた。
ノッティンガムでもコヴェントリーでもラフボローでもパブに入ってみたが、どこも実に素朴で、街の寄り合い所みたいな感じだった。期待していたフィッシュ&チップスは、なんというか、実にざっくりした歯ごたえで脂っぽく、本で読んで知っていただけの私には、ちょっと残念な味わいだった。けれど、ビールはよかった。安くて、うまい。現地の人と一緒に、ゆっくりと飲む。ガスは抜けて、温くもなるのだが、不思議にうまい。
5日間の滞在中、食べたものはあまり印象に残っていないのだが、パブのビールと、ホテルやB&Bの部屋で深夜に舐めた、その名も「スコッチウイスキー」(スーパーで激安で売っていたもの)というよくわからないウイスキーが、妙に沁みた。きっと、寂しかったのだろう。
それから数年経って、スコットランドへ行く機会に恵まれた。蒸溜所を訪ねる取材旅で、初日はロンドンに泊った。ホテルはハイドパークのマーブルアーチに近いモントカームで、当時はたしか日航系だった。
夕方に荷物を下ろし、しばし休憩してからパブへ行った。ホテルから歩いて10分もかからないところにいい店があると、ロンドン駐在の同行者が連れて行ってくれた。
「ジ・オードリー・パブリック・ハウス」。レンガ壁で、風格があり、間口がとても広い。その店の前に、店内に入りきらない人々が立って飲んでいる。パリっとしたスーツを着た男たちが、9月のロンドンの夕暮れ時に、みな、笑いながら飲んでいるのだった。
これがロンドンの真ん中のパブなのか……。ラフボローとノッティンガムを結ぶ街道沿いのパブとはまるで違うお洒落さだった。ポーっとした私は、店内のお姐さんにビール1杯注文するにも、ひどく緊張した。そして、わずか2杯のビールでほろ酔いになった。
それから18年が経つ。ロンドンもラフボローも、ずいぶん変わったのではないか。また、ぜひ訪ねてみたい。地下鉄でパブを巡りつくすロンドン・パブ・マラソン……。同じように見えても、店ごとに違いがあるだろう。それがわかるようになったら、さぞや、楽しいことだろう。などと、バカなことを考えている。

















