高知・土佐清水市の足摺海底館が解体へ…1年での取り壊しもある登録有形文化財の中途半端な文化的価値
全国に7カ所にしか現存していない海中展望塔が登録有形文化財になっている、高知県土佐清水市の「足摺海底館」が9月30日に営業を終了した。施設の老朽化を理由に休館していたが、改修に約5億円かかると判明し、再開を断念。展望塔へと渡るための連絡橋は骨組みが腐食していることから、解体が決まったのだ。
連絡橋がなくなると、事実上、展望塔にアクセスする手段がなくなってしまう。展望塔本体は当面残すというものの、ゆくゆくは壊されてしまうのではないか。不安視する人がいる一方、「えっ、文化財が壊されることがあるの?」と疑問を抱く人もいるかもしれない。
■登録されても登録解除され、壊されることもある
文化財には様々な分類や名称がある。もっとも有名な国宝や世界遺産のほかにも重要文化財、重要無形民俗文化財、重要無形民俗文化財保持者(人間国宝)、名勝、史跡、天然記念物、それぞれの都道府県指定の文化財……といった具合だ。まだまだたくさんあるが、今回のテーマは「建造物」の「登録有形文化財」である。
日本に数ある歴史的建造物の中でも、文化庁によって価値があると認められたものは重要文化財に指定。さらに重要文化財の中から、特に価値が高いものは国宝に指定される。登録有形文化財はそれを補完する仕組みとして1996年に新設されたもので、より幅広く文化財の保存を図っていこうとする制度である。
国宝・重要文化財に指定されると、少しの改造にも制限がかかる分、修理の際には補助金が出るなど、国の支援は手厚い。一方、登録有形文化財はゆるやかに文化財を守っていこうという趣旨で、“指定”ではなく“登録”と区別される。改造に関しても多くは届け出不要で行えるが、補助金などは出ないことがほとんどだ。
登録有形文化財と重要文化財は、名称が似ているものの、それぞれの性質はまったく異なる。登録有形文化財は「登録が解除され、取り壊されることも“普通にある”」のが最大の特徴で、国宝・重要文化財は焼失でもしない限り、一度指定されると原則として指定解除されることはない。登録されても壊されるリスクがあるわけで、登録有形文化財は不思議な制度ともいえる。
■白雲楼ホテル、奈良屋旅館…すでに200件が取り壊しに
すでに取り壊された登録有形文化財はいくつもある。たとえば、石川県金沢市の湯涌温泉にあった「白雲楼ホテル」は、昭和初期に流行したスパニッシュ様式の建築や和風のデザインの建築群が経つ名門ホテルだった。1997年に登録されたが、バブル崩壊の影響で経営破綻。廃墟になった結果、2006年に解体された。
神奈川県・箱根にあった「奈良屋旅館」は2000年に登録有形文化財になったが、相続税の支払い問題などを理由に2年後に解体されている。湯河原の「天野屋旅館」に至っては、2007年に登録、翌2008年に解体という道をたどった。わずか1年後に解体とは、いったい何のために登録しているのか意味が分からなくなる。
兵庫県神戸市にあった個人住宅の洋館「室谷家住宅」は、建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計で1934年に建設され、昭和初期のチューダー様式を代表する傑作として知られていた。1996年に登録されたが、その後に不動産業者の手に渡り、保存を呼びかける声もむなしく2007年にあっさり解体されている。

















