たばこ1箱1000円でも吸うの? 高い成功率の禁煙法とは
たばこの価格は上がる一方、自治体や企業も禁煙推進に取り組むため、吸う側の肩身はどんどん狭くなる。自民党の受動喫煙防止議員連盟が10月25日、東京五輪の受動喫煙対策として、たばこ税を増税して1箱を1000円以上に引き上げるよう政府に申し入れている。
ジョンソン・エンド・ジョンソンが2016年の世界禁煙デーに発表した「禁煙成否の秘訣調査」によれば、禁煙に挑戦する一番の理由は「たばこの値上げ」。1箱1000円なんてニュースを見て、そろそろ真剣に禁煙を考えるビジネスマンも多いだろう。
たばこが健康に悪いのは分かっているのに、なかなか禁煙できないのはなぜなのか。その理由は、ニコチンが欲しくなるとイライラする身体的依存と、食事やお酒を飲むとついつい習慣で吸ってしまう精神的依存の2つだ。
ニコチンが身体にどう作用し、禁煙の邪魔をするのか。禁煙支援グループ「しえんの会」で15年以上活動し、禁煙外来も行う産業医の草野涼先生に聞いた。
「たばこを吸うとニコチンが脳に取り込まれ、多幸感が得られたり意欲がわく脳内ホルモンであるドパミンなどの神経伝達物質が脳内から強制的に放出されます。それが習慣化すると、ニコチンなしでは神経伝達物質の放出がコントロールできなくなり、たばこがやめられない『ニコチン依存症』になってしまいます」
■意志だけの禁煙より2倍の成功率
実は、喫煙以外の方法でニコチンを摂取しながら、最終的には禁煙に導く治療法がある。「ニコチン置換療法」と呼ばれる禁煙方法だ。
「ニコチン置換療法は、たばこに含まれるニコチンをガムや皮膚に貼るパッチなど喫煙以外の方法で摂る禁煙方法。イライラや集中困難、不安などの離脱症状を軽減しながら生活習慣を改善し、徐々にニコチンを減らして禁煙に導きます。ガムやパッチはOTC(一般用)薬として薬局や薬店、ドラッグストアで買えますから、禁煙外来を受診できない人には挑戦しやすい。それほど苦しまずに済み、効果的な禁煙治療法だといえます」(草野先生)
ニコチン置換療法は、意志だけの禁煙と比較すると、禁煙成功率が約2倍になるというデータ(※)もある。そんなさまざまある置換療法でも、たばこを吸わなくなることで“口さみしさ”が不安というなら、ニコチンガムを選ぶのはどうだろう。
※=Nicotine replacement therapy for smoking cessation (Review); The Cochrane Library 2004, Issue 3
ニコチンガムを噛みながら仕事ができれば、離脱症状のイライラが解消できるし、喫煙に費やしていた時間も減らせるから一石二鳥。そして仕事の効率が上がれば、残業時間も減らせるかもしれない。
「禁煙は本人だけでなく、会社にとってもプラスの効果をもたらす場合があるのです」(草野先生)
ニコチンガムによる禁煙、ビジネスマンなら試してみない手はない。