岡田監督「つぶれたらどうする」「好きにせい!」下柳剛が10回148球でつかんだ最年長最多勝
「そう言うてもなあ、つぶれたらどうする」
「監督、心配はわかりますが、日本シリーズまで2週間以上あります」
「でもなあ……」
「お願いします。続投させてください」
「そう言うてもなあ、つぶれたらどうする」
「無理はさせません」
「……」
「お願いします」
「好きにせい!」
監督とベンチ裏ですったもんだしている間、下柳は控室でアンダーシャツを着替えながら私たちの会話を聞いていた。
八回も下柳をマウンドへ送り出したのだが、この日は打線が振るわず九回も無得点に終わり、延長戦に突入したのは予想外だった。打線の奮起を願いつつ十回も続投させた。下柳は5回ないし、6回で降板するのが常。疲労の色が見えてきたし、残念ではあるが、さすがにこれ以上投げさせるわけにはいかない。
「なあシモ、もうやめようか」
「わかりました。十分です」
結局下柳は、10回148球を投げ、ベンチ裏に下がった。するとこの回、鳥谷が横浜の2番手・加藤からバックスクリーン左へ、サヨナラアーチを放った。スタンドもベンチもお祭り騒ぎで、再びユニホームに着替えた下柳がベルトも締めずに慌ててグラウンドに出てきた姿には笑った。今季初完投の15勝目だった。
その2日後、ヤクルト戦に中継ぎ登板した黒田も勝利投手となり、2人は15勝で並びタイトルを手にした。
下柳は13年に現役を引退。プロ野球史上最年長の最多勝が唯一の「勲章」となった。


















