五木寛之 流されゆく日々
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連載10387回 “運”の格差を考える <2>
(昨日のつづき) きのうは大谷選手の3ホーマーの快挙について書いた。ところが今日の新聞を見ると、開幕2連勝、12奪三振、1安打零封とかで大騒ぎである。 大谷選手の潜在能力は凄い。だが、ここまで…
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連載10386回 “運”の格差を考える <1>
格差社会である。そのことは、つとに議論の的になっている。 世界の富の大部分を1パーセントの連中が独占しているとか、下層民の増加とか、さまざまに言われている。 しかし、格差は経済の問題、金や収…
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連載10385回 海外出版界遠眼鏡 <5>
(昨日のつづき) 『出版ニュース』に連載された竹内和芳さんの「海外出版レポート・フランス篇」のダイジェストである。 私たちが若い頃は、「おフランス」などと言って、フランスは知性の国とされていた。…
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連載10384回 海外出版界遠眼鏡 <4>
(昨日のつづき) 竹内和芳さんの「海外出版レポート」のバックナンバーをアトランダムに読む。 その中にジャンヌ・モローの死について触れている文章があった。 ジャンヌ・モローとは、私は2度も対…
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連載10383回 海外出版界遠眼鏡 <3>
(昨日のつづき) いまは世界中の情報が、いながらにして流れこんでくる時代である。 いや、本当はそうでないのかもしれない。最近、しきりにそう思うようになった。 インターネット、テレビ、新聞・…
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連載10382回 海外出版界遠眼鏡 <2>
(昨日のつづき) 海外で日本の漫画が大きな市場を占めていることは、誰もが知っていることだ。しかし、ヨーロッパのそれぞれの国の漫画の世界は、それとひと味ちがった方向で動いているように見える。竹内和芳…
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連載10381回 海外出版界遠眼鏡 <1>
『出版ニュース』(2月下旬号/出版ニュース社刊)をパラパラとめくっていたら、ドイツの出版界の近況が紹介されていた。 『出版ニュース』は友人の竹内和芳さんが海外出版レポートを連載しているので、毎号興味…
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連載10380回 一生口舌の徒として <5>
(昨日のつづき) 講演というのは、自分のふだん考えていることや、知っていることを喋ることではない。 ジャズの即興演奏ではないが、タイトルだけはきまっている。しかし、話がどう展開するか、どういう…
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連載10379回 一生口舌の徒として <4>
(昨日のつづき) テレビをつけてみると、金正恩の中国訪問で大騒ぎだ。 貴乃花部屋の暴力事件につづいて、またまた「マサカ」のニュースにマスコミは右往左往だが、今を「マサカの時代」と覚悟してしまえ…
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連載10378回 一生口舌の徒として <3>
(昨日のつづき) どんな老人になりたいですか、と聞かれることがある。 「体はガタガタで寝たきり老人でも、口だけは若い者より達者な老人になりたい」 と答えると、だれもが苦笑して、 「いちばん…
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連載10377回 一生口舌の徒として <2>
(昨日のつづき) 一夜、明けて、好天である。青空がひろがるというほどではないが、暖かい日差しが降り注いでいる。ホテルの部屋から福山城が眼下に眺められる。 どうやら福山では、桜はまだらしい。横浜…
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連載10376回 一生口舌の徒として <1>
この1週間あまり、メチャ忙しかった。 なにしろ講演が4つも集中してしまったのだ。これまで五十余年のあいだに、こんなことはなかった。 3つが地方での講演、1つが東京での催しだった。 そのな…
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連載10375回 「オイハラ」とは何か? <4>
(昨日のつづき) 奈良へ日帰りでいってきた。やはり一泊すればよかったと後悔する。京都までは新幹線でスムーズに着くが、そのあと近鉄に乗りかえてからが大変だ。 特急で1時間あまり。橿原神宮前までい…
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連載10374回 「オイハラ」とは何か? <3>
(前回のつづき) オイハラ(老人ハラスメント)の一つに、過度に高齢者の世話をやく、ということがある。年をとって脚が不自由になっても、堂々とふるまいたい人はいるものだ。ヘンリー・ミラーが、飛行機のタ…
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連載10373回 「オイハラ」とは何か? <2>
(昨日のつづき) 弱者や、差異や、性差に関するハラスメントが、いま世界の話題である。お世辞のつもりが「セクハラです」と抗議されかねない時代になった。B・Bとか(古いね)、カトリーヌ・ドヌーブとかが…
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連載10372回 「オイハラ」とは何か? <1>
この冬は、ほとんど一枚の黒のタートルネックのセーターですごした。 上着は肘当てのついた茶系のブレザーである。外に出るときは、きまってそれ一着。 打ち合わせも、街へ買物にいくときも、テレビ出演…
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連載10371回 「マサカの時代」に思う <5>
(昨日のつづき) 昨夜は徹夜したものの、結局、最後の原稿ができずに朝を迎えた。今日は日経ホールで講演の予定があるので、しばし仮眠。 夕刊に目を通すと、マサカの事故の記事が目についた。日本人ノー…
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連載10370回 「マサカの時代」に思う <4>
(昨日のつづき) 午後3時に目覚めた。ゆうべ徹夜したので、まだ眠い。4時、KADOKAWAの菅原氏、蔵本氏と面談。戦後七十余年間の忘れられた名著のラインナップを検討する。出版界も大量生産大量消費だ…
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連載10369回 「マサカの時代」に思う <3>
(昨日のつづき) 私の生涯における最大のマサカは、言うまでもなく外地における敗戦体験だった。12歳のときである。 この話はいやになるほどしてきたので、ここでは書かない。ピョンヤンを脱出して、三…
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連載10368回 「マサカの時代」に思う <2>
(昨日のつづき) 毎日、えっ、と驚ろく日々の連続である。 もちろんマスコミの誇大報道もあるが、それにしても予想しなかった出来事の連発だ。 政治の世界は「一寸先は闇」と昔から言われてきた。そ…