保阪正康 日本史縦横無尽
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「戦争は負けと思った時が負け」と国民に説いた東條首相
太平洋戦争は3年8カ月間も続いた。戦争とは国力と国力が軍事で衝突する局面である。ドイツ降伏後の最後の4カ月は、日本が単独で世界各国70カ国余と戦う状態になった。この構図を一言で言えば、まさに世界から…
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大本営の「あなたは英雄を逃した」に苦笑した近衛文麿
太平洋戦争の始まりは、日本社会に奇妙な歪みを生んだ。昭和16年12月8日からの日々では、ラジオ放送は「大本営発表」を勢いよく伝え、日本軍が東南アジアに進出していくさまを詳細に報じた。アナウンサーの高…
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自国第一主義…米、英、ソ連は日本の真珠湾攻撃を喜んだ
日本の陸海軍が真珠湾攻撃を始め、東南アジア各地に兵を進めることは、すでに開始されている第2次世界大戦にドイツ、イタリアと手を結ぶ形で加わることであった。アメリカ、イギリスなどの連合国と交戦状態になる…
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「ヒトラーと同格にするな」と怒った東条英機の短絡的考え
真珠湾攻撃の奇襲攻撃時に軍事指導者たちの反応がどのようなものだったかを見るのは重要だ。なぜなら指導者の実像を確かめる最も有効な手段だからである。近視眼的で、個々の状況に一喜一憂するのは「経綸」のない…
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司令長官・山本五十六を悩ませた だまし討ちと天皇の言葉
真珠湾攻撃を成功させた連合艦隊司令長官・山本五十六が、奇襲攻撃の成功に喜色を浮かべなかったのは何故なのか。そのことも改めて考える必要がある。 旗艦長門の作戦室で笑顔を浮かべることなく、物思い…
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主導権を握った“透視力”のない者がはしゃいだ真珠湾攻撃
太平洋戦争に至る道筋を丹念に見ていくと、軍事指導者の中で歴史的な透視力を持つ者と持たない者との差が歴然としてくる。昭和10年代の日本の不幸は、透視力のない者が主導権を握ってこの国を差配したことであっ…
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軍人が天皇を巧みに利用したせいで米国の思うつぼにはまる
戦争終結に関する腹案は冒頭で「方針」と掲げ2項を上げている。その中に「蒋政権の屈服を促進し独伊と提携して先つ英の屈服を図り米の継戦意思を喪失せしむるに勉む」との一節がある。具体的には日独伊で英を屈服…
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「勝利」以外の可能性を論じる軍人は指導部から追放された
太平洋戦争に入る前の軍事組織は戦争を望んでいたが、それは指導者たちが心の中で「勝利」以外を信じないという決心を固めることでもあった。彼らは勝利以外の可能性を論じる者は敗戦論者だとして指導層から追い払…
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天皇のためなら何をやっても許されると「大善」を妄信した
軍事指導者たちは何としても、戦争に訴えて局面を打開しようと考えているかに見えるが、現実には戦争それ自体が目的であった。軍人は本来なら、戦争の抑止力としての立場があるが、日本では戦争によって自らの存在…
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「戦争しないと国が滅びる」と天皇に詰め寄った軍人たち
平成の天皇の、平成という時代には戦争がなかったとのお言葉は、むろんご自身の率直なお気持ちの表れであると同時に、昭和天皇への報告という意味も感じられる。昭和という時代の前半は、戦争の時代だったが、それ…
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戦前の軍事指導者は昭和天皇と憲法を“軽視”して暴走した
平成の天皇は在位30年の折のお言葉でも、「平成という時代には戦争がなかった」ことに触れ、声を震わせられた。このお言葉はご自身の在位期間に戦争がなかった事実にのみ触れられているように受け止められたが、…
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「令」は皇太子の「命令書」や「巧言令色」だとの声もある
新元号の「令和」は、国民にはひとまずは受け入れられたようだ。共同通信社の緊急世論調査によると、73.7%が、「好感が持てる」と回答したそうだ。万葉集からの採用については、84.6%が評価すると答えた…
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天皇が神格化し皇国史観が機能した時代の「令」は怖い
首相談話を読んでの感想のもう1つの部分だが、これまで少しふれたのでもあるが、意外な事実が隠されている。それは次の部分である。 「皇室の長い伝統と、国家の安泰と国民の幸福への深い願いとともに、1…
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談話に“2つの鍵” 安倍首相「令和」会見は単なる選挙対策か
「令和」という元号が明らかになった時、私の元に何人かの知人、友人たちから連絡があった。私は定期的に市民講座やカルチャーセンターで講演を続けているのだが、そこの受講生からだ。号令の令や召集令状の令が思い…
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「令和」への首相説明には平成を継承する視点が欠けている
新元号は「令和」と決まった。万葉集から採ったという。これまでは漢籍から採るのが一般的だったのに、今回は初めて日本の古典からというのが典拠だというのである。どうあれいかにも安倍内閣らしいと言っていいだ…
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天皇と政治権力の関係、在り方を冷静に考えてみるべきだ
4月1日、新しい元号が発表された。巷にはさまざまな噂が流れていた。根拠がどこにあるかは知らないが、東京の小、中学生の間では、安心とか安全という語の「安」という一字が入ると言われていた。おおかた、教師…