鈴木敏夫 新・映画道楽 体験的女優論
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余貴美子編(2)常に女性の側に立つ神代監督の姿勢を感じる作品
神代辰巳監督の「盗まれた情事」(1995年)は、優秀な医者と2人の悪女の物語である。 妻と倦怠期にある三浦友和演じる医者は、雑誌で「妻と情事をしてくれる相手を探しています」という広告を見て応…
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余貴美子編(1)「盗まれた情事」には団塊の世代の男たちの愚痴が全編にあふれている
神代辰巳監督は1995年2月24日に亡くなった。その約4カ月後。7月1日放映されたのが、神代監督最後のテレビドラマ「盗まれた情事」である。鈴木敏夫は今まで見てきたテレビドラマの中でも、愛してやまない…
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山本陽子編(1)問題作「蛇苺」モラルを捨てて暴走していく女性を憑かれたように演じる
1987年5月29日に放映された「蛇苺」は神代辰巳監督、岸田理生脚本による3本目のテレビドラマである。冒頭、山本陽子と中谷一郎の息子がバイク事故で死亡。一緒にバイクに乗っていた親友の宮川一朗太も大け…
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原田美枝子編(4)「絶世の美女とは一人でいくつもの顔を持つ多重人格の女性に違いない」と高畑勲監督
鈴木敏夫は神代辰巳監督の「もどり川」(1983年)を見て、主人公・苑田岳葉と関わる5人の女性がくっきりと区別されて描かれていないと感じた。そこから彼は、かつて高畑勲監督と映画化しようとした、鎌倉末期…
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原田美枝子編(3)大正時代の男女の関係性を描いた集大成「もどり川」
神代辰巳監督は「四畳半襖の裏張り」(1973年)以来、何度も大正時代を題材にしてきた。その彼が最後に大正を描いた作品が、「もどり川」(83年)である。これは連城三紀彦の小説「戻り川心中」を原作に、萩…
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原田美枝子編(2)興行的には大コケした「地獄」には捨てきれない魅力を感じる
1979年6月。神代辰巳監督、原田美枝子主演の東映作品「地獄」が公開された。これは弟の妻と関係した資産家の兄が彼女と一緒に逃げ、女性の方は弟の放った追っ手によって殺害される。だが彼女は亡くなるときに…
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原田美枝子編(1)増村保造監督作「大地の子守歌」を見てすごい女優が出てきたと…
原田美枝子は10代の時に、フルスピードで日本映画界を駆け抜けた女優である。15歳の時に出演したデビュー作「恋は緑の風の中」(1974年)でヌードを披露し、76年には野性的な娼婦を演じた「大地の子守歌…
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市原悦子編(2)神代辰巳&岸田理生の作品に4本出演…彼女でなければ特殊な世界観を演じきれなかった
神代辰巳監督、岸田理生脚本によるテレビドラマ「母の手紙」(1985年)は、連城三紀彦原作によるサスペンスである。資産家の母親(市原悦子)と暮らす一人息子(田中健)が、身寄りのない女性(永島瑛子)を嫁…
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市原悦子編(1)刃物で刺されるたびに「痛~い」と叫ぶ演技にはリアリティーがあった
脚本家として、映画やテレビで神代辰巳監督と名コンビを組んだ岸田理生。彼女は1973年に寺山修司が主宰する演劇実験室「天井桟敷」に入団。寺山が監督した「田園に死す」(74年)で助監督を務め、初めて映画…
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酒井和歌子編(2)本物の“女の自立”を描いた「愛の牢獄」に衝撃を受けた
「愛の牢獄」は1984年に放送された、神代辰巳監督、酒井和歌子主演による3本目の2時間サスペンスドラマだ。ストーリーを説明すると、酒井和歌子は33歳まで処女だった資産家のお嬢さん。骨董品などの遺産を受…
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酒井和歌子(1)かつての清純派と性によって人間を描いてきた名匠の組み合わせの妙
鈴木敏夫は昔から神代辰巳監督の映画が好きだったが、最近改めてそれらを見直すきっかけをつくったのが、神代監督による酒井和歌子主演の2時間サスペンスドラマだった。 「僕は『めぐりあい』(1968年…
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芹明香<3>西成の風景に馴染んで根っからの娼婦に見える
神代辰巳映画の女優たちというテーマからは少しずれるが、女優・芹明香を語る上で田中登監督の「(秘)色情めす市場」(1974年)を外すことはできない。これは日活ロマンポルノという枠を超えて、日本映画史上…
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芹明香<2>「下手だね」セックスした時に彼女が言うとリアリティーがある
芹明香が登場した神代辰巳監督作品で、鈴木敏夫が印象的な一本として挙げるのが、「赤線玉の井 ぬけられます」(1974年)である。これは、売春防止法が4月から施行されようとしている58年の正月。東京・玉…
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芹明香<1>ロマンポルノのテーマはひとつ「人間は動物である」ということ
神代辰巳監督の女優たちをさらに語ってもらう前に、鈴木敏夫が日活ロマンポルノを見直して気づいたことについて、触れておきたい。彼が名古屋で過ごした高校時代。映画好きな国語の教師がいて、彼は映画監督・今村…
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宮下順子<2>「赫い髪の女」で演じた“セックスの塊のような女”に感動を覚えた
1979年の公開からかなり後になって、鈴木敏夫は仲間と神代辰巳監督の「赫い髪の女」を再見した。この映画は中上健次の小説を原作に、石橋蓮司演じる男に拾われた宮下順子扮する赫い髪の女が、彼の部屋に居つい…
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宮下順子<1>傑作の神代辰巳2作品 ロマンポルノは日陰の娯楽から一般映画になった
17年近い日活ロマンポルノの歴史の中で、傑作に数えられるのが神代辰巳監督の「四畳半襖の裏張り」(1973年)と「赫い髪の女」(79年)である。この2本に主演した女優が宮下順子。鈴木敏夫の中にも、この…
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中川梨絵の一種独特なエッチな雰囲気が「恋人たちは濡れた」からは感じられなかった
1970年代前半、日活ロマンポルノ初期の作品の中で、鈴木敏夫が最もエッチな女優として印象的だったのが中川梨絵だという。 「本当の初期に主演した白川和子さんや田中真理さんは上の世代な感じがしたし…
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一条さゆり<2>「神代さんにとって、ストリッパーは自分が思いを傾けて描きやすい女たちだったんじゃないかと思うんです」
神代辰巳監督によるストリッパーの一条さゆりが主演した「一条さゆり 濡れた欲情」(1972年)を見て、衝撃を受けた鈴木敏夫。編集者だった彼はその年暮れに、週刊誌「アサヒ芸能」で8本ある対談原稿記事の半…
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一条さゆり編<1>ポルノと謳いながらもちゃんとした映画であることに衝撃
1970年代初頭、東京・新橋の山手線のガード下に「新橋文化劇場」「新橋日活ロマン劇場」「新橋第三劇場」という3つの映画館があった。72年4月に徳間書店へ入社し、週刊誌「アサヒ芸能」の編集者として働き…
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桃井かおり<5>「ホーホケキョ となりの山田くん」まつ子の声を桃井さんにしようかと悩んだ
1988年、日活(当時はにっかつ)は17年間続いたロマンポルノ路線から、一般映画を製作・配給していくロッポニカ路線へと転換した。その第1弾作品の一つとして作られたのが、神代辰巳監督、桃井かおり主演に…