「ありえない写真」の謎をAI探偵とともに調査「街角ハルシネーション」早坂吝著
「街角ハルシネーション」早坂吝著
人工知能が世界中の普通の人々の人生をアシストする。一昔前までSF小説の中だけの話だったのが現実のものになっている。文章のブラッシュアップ、旅行のプランや、誰にも言えない個人的な悩みをAIに相談して解決した人もいる中、一方で生成AIで作った熊の画像で役所や市民をだますヤカラが現れたりもする。某野球チームの監督が辞任まで追い込まれた事件の中にもAIが登場していた。果たして人類とAIはどう付き合うべきなのか。それを今最も提示してくれているのが早坂吝の小説「探偵AIのリアル・ディープラーニング」シリーズだ。天才科学者の息子、合尾輔が、父が作った探偵AIの相以と共にさまざまな事件を解決していく。SF小説にありがちななんでもありな展開ではなく、まさにリアルにAIの弱点もしっかり書き出しているところが特徴だ。小説本文が始まる前に「ほんの少し手を伸ばせば届くくらいの未来……あるいは現在の話」という一文が添えてあるのがとても良い。今回はシリーズの最新作を紹介したい。
本作で話の中心になるのはとある写真家がSNSにアップした1枚の風景写真。そこには奇妙な転び方をしている男や、指が6本あるウエートレスなどが写り込んでおり、多くの「人間」から生成AIで作られた写真特有のバグだと非難され、写真家は自殺する。彼の弟子が写真をAI探偵である相以に見せたところ「現実に撮られたものですね。AIが生成したものではありません」と断言する。ありえない写真はなぜ生まれたのか。相以と輔は捜査を開始する。
シリーズの中でも最も「今」に近いテーマを扱っていると思う。だからこそAIは我々人類の味方なのか敵なのか、真剣に考えさせられる話になっていた。
AIが出てくるSFミステリーは小難しそう……と思っているのなら大間違いだ。本シリーズは新潮社の中でも若者向けのレーベル新潮文庫nexから出てるし、文章もハイテンポで言葉遊びを浴びせてくるので読んでて心地が良い。悪役と事件の核になっているトリックの裏側に狂気も感じられる。新世代のサイコポップミステリーなのだ。これだけ紹介されたら読むのも吝(やぶさか)じゃないなと感じてくれたならぜひ。 (新潮社 737円)



















