著者のコラム一覧
カモシダせぶん書店員芸人

1988年、神奈川県生まれ。お笑いコンビ「デンドロビーム」(松竹芸能)のメンバー。日本推理作家協会会員。現在、都内の書店でも働く現役の書店員芸人。著書に「探偵はパシられる」など。

オチの強烈さは今作が一番!「楽園」夕木春央著

公開日: 更新日:

「楽園」夕木春央著

 ミステリーの世界ではさまざまな状況で事件が起きてくる。その中でクローズドサークルと呼ばれる設定は古くから人気で古今東西名作も多い。クローズドサークルとは、雪山の山荘や、絶海の孤島、天候によって助けを呼べないなどの閉鎖空間のことを指す。近年、このクローズドサークルもののミステリーで高く評価され、書店でもかなり売れている作家の一人が夕木春央さんだ。

 謎の地下施設に閉じ込められ、さらに水没の危機に陥り、さらに殺人事件が起き、脱出するためには殺人犯をいけにえに捧げなければいけない「方舟」。

 離島に集まった男女、そこで殺人事件が起きるが、犯人を捜そうとすると爆弾で島ごと爆破されてしまうという規制がかかる「十戒」。

 単純なクローズドサークルではなく、ひとひねり加わってるのが特徴、オチのどんでん返しの衝撃も凄い。そんな夕木さんの最新作がこの「楽園」だ。

 話は両親を不慮の事故で亡くし、相続で得た不動産を管理している主人公が恋人と共にある人物を捜しに外出してるところから始まる。2人は山奥にあるみすぼらしい家にたどり着くのだが、そこに住む6人の住人たちに監禁されてしまう。「楽園」と呼ばれるこの場所から脱出するために住人から出された条件はただひとつ。6人の住人のうち誰か1人を殺すこと。逃げられない極限状態で楽園の住人たちと暮らす中、主人公たちはどのような決断を下すのか。

 相変わらず自分が遭遇したら嫌すぎる状況だ。楽園の住人たちにはある共通点があるのだが、自分だったらこんな人たちと生活することがまず戸惑う。本作は主人公が悲惨な場面に遭遇しすぎて「方舟」「十戒」よりも、感情がどんどんドライになっていくところがより怖く感じ、またオチの強烈さは今作が一番だったと思う。面白かった。

 ちなみに今回登場した3作ともタイトルに聖書からの単語が使われている。深く読むとそこが裏テーマなのかなと感じた。3作ともつながりは一応あるが、そこまで強くシリーズものという感じではない。なのでこの楽園から入り、ほかの2作を読むのもいいだろう。

 良質なミステリー小説を読みたいのなら、ぜひ夕木春央さんのクローズドサークルものの面白さの中に閉じ込められてほしい。 (講談社 1980円)

【連載】書店員芸人カモシダせぶんの「いい本入ってますよ!」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(2)2018年に次男が急逝「息子だけど、音楽の、とても良い仲間でもあった」

  2. 2

    中丸雄一「アパ密会」から2年で“冠番組”…禊は済んでも「元のポジション」には戻れないワケ

  3. 3

    伝説の『アメリカ横断ウルトラクイズ』来年復活へ 番組を取り巻く環境の激変で日テレに突きつけられた課題

  4. 4

    甲子園史上最速156キロ横浜・織田翔希にNPBスカウト早くも白旗 「直メジャー」なら契約金5億円も

  5. 5

    不倫問題の西武・源田壮亮に同情が集まる意外なワケ…妻・衛藤美彩の“幸せアピール”に疲れ果てた?

  1. 6

    皇族費増額の彬子女王、ブータン訪問にまた波紋…同行・伊藤穰一氏とエプスタインの“過去”

  2. 7

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  3. 8

    「VIVANT」は観光客を呼べる! ロケ地巡りビジネスが大繁盛

  4. 9

    佐藤輝明の「メジャー移籍強行突破」に現実味…“阪神残留説”も「折れるつもりはない」の声

  5. 10

    京都・向日市、府内初の130メートル級、ゆがんだ建設計画に立ち向かう辣腕弁護士