萩本欽一〈53〉スポンサーなしで始めた番組に起きたウソのような偶然、「道端で出くわした人が桃屋の社長さんで…」
作家・増田俊也氏による連載、各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。待望の第2弾は、「視聴率100%男」として昭和のテレビ界を席巻したコメディアンの萩本欽一氏です。
◇ ◇ ◇
増田「以前、『9階のハギモトさん』はスポンサーなし、出演料なしで始めたという話を伺いました。『育ててから生まれる』という、昔のテレビでやっていた方法をもう一度やろうとした」
萩本「そうです」
増田「BS日テレに企画を持っていったら、顧問の中山良夫さんが『でかすぎるからやる』と言ってくれたという話もありました」
※BS日テレ(びーえすにってれ):日本テレビ系列のBSデジタル放送局。正式社名は株式会社BS日本。2000年に放送を開始し、報道、スポーツ、ドラマ、紀行、バラエティーなど幅広い番組を放送している。萩本欽一の『9階のハギモトさん』を放送し、スポンサーを最初につけずに番組を育てていくという萩本の新しいテレビ作りの試みに取り組んでいる。
萩本「あれはうれしかったね。やっぱりトップっていうのはすごいよ」
増田「そこから実際に番組を始めるまでが早かったんですよね」
萩本「早い。8月に話して、10月からやるって決まったの」
増田「わずか2カ月」
萩本「そう。それで私から条件を出したの。スポンサーから最初にお金を取らない。それから『ギャラは私に払わないでください』って」
増田「ノーギャラで出ると」
萩本「そう。それから日本テレビにも迷惑かけたくないから、『制作費も全部私が出します』って言ったの」
増田「スポンサーなし、出演料なし、そのうえ制作費まで萩本さんが出す」
萩本「そうしたら、そこだけは納得いかないって言われたの。いくら何でも日本テレビはお金がないわけじゃない。制作費まで欽ちゃんに出させるわけにはいかないって。私は『だって迷惑かけたくないから払います』って言ったんだけど、向こうも『嫌だ』って」
増田「お互いにお金を出すと言い張った(笑)」
萩本「そう(笑)」
増田「互いに『俺が出す』『いや俺が出す』っつって」
萩本「そうそう」
増田「普通と逆ですよね」


















