孤独のキネマ
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【エディントンへようこそ】コロナ騒動で現代アメリカの病理を描いた問題作
原題は「EDDINGTON」。日本の関係者は「エディントンへようこそ」という邦題を命名した。本作は新型コロナで右往左往する田舎町が舞台。ブラックジョークなストーリーゆえ「ようこそ」を追加したほうが分…
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【殺し屋のプロット】記憶喪失と闘うヒットマンが息子の犯罪に奔走
引退する殺し屋といえばリーアム・ニーソンのおはこだが、この男も負けてはいない。本作「殺しのプロット」のマイケル・キートンだ。記憶喪失と闘うヒットマンを重厚に演じている。 殺し屋のジョン・ノッ…
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「ナイトフラワー」極貧シングルマザーが売人に転落する血と暴力の世界
最近「シスターフッド」という言葉をよく耳にする。デジタル大辞林によると「①姉妹。また、姉妹のような間柄。②共通の目的をもった女性同士の連帯」の意味だ。本作「ナイトフラワー」は若い女2人のシスターフッ…
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【ドミニク 孤高の反逆者】ウクライナの女兵士が南米のワルどもをゲリラ戦で撃退
不思議なことだが、美女と拳銃のマッチングは映画映えする。か弱いはずの女が武器を手に取ると、男よりもカッコよく見えてくるのだ。この「ドミニク 孤高の反逆者」の主人公はピストルだけでなく機関銃をバンバン…
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【ブルーボーイ事件】性転換手術の医師をさばいた60年前の実話。その判決は?
筆者は日刊ゲンダイの記者として働いてきたから、世の中の事件や現象に目を向けてきたつもりだが、恥ずかしながら「ブルーボーイ事件」は知らなかった。本作は性的マイノリティーの人々が直面した実話を描いた問題…
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【モンテ・クリスト伯】少年時代の興奮が蘇る復讐劇の大作
子供のころ学校の図書館で「巌窟王」を読み、胸をわくわくさせた人は少なくないだろう。もともとはアレクサンドル・デュマの長編小説「モンテ・クリスト伯」。これを黒岩涙香(1862~1920年)が少年少女向…
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【火の華】自衛隊の隠蔽問題から飛び出した兵士の苦悩と愚行の物語
2016年、北アフリカ南スーダンでPKO活動中の自衛隊が襲撃を受けた。日本政府はこの事実を公表せず、当時の日報を廃棄したと説明。ところがジャーナリスト布施祐仁の情報開示請求によって、日報の電子データ…
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【愚か者の身分】戸籍売買の闇社会に生きる男たちが落ちた血まみれの地獄
藤沢周平の短編小説「恐喝」に、江戸時代のチンピラ主人公が従妹から「あんなのと早く手を切らないといけないよ。そうでないとおまえ、いまにひどい目に遭うよ」と説教される場面がある。「あんなの」とは主人公に…
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「おーい、応為」葛飾北斎とお栄、天才父娘が織りなす画業の相克
タイトルの「おーい、応為」は葛飾北斎が娘のお栄に「おーい、筆!」「おーい、飯!」と命じていたことにちなむ。本作はそのお栄の半生を描きながら、巨星・葛飾北斎の反骨ぶりを活写している。 北斎(永…
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「見はらし世代」妻の死による家族の崩壊。子供たちはなぜ父親を憎むのか?
この作品を見て「家族とは実に難しいものだ」と思った。お叱りを受けるかもしれないが、仕事に燃える男にとって、家族を抱えるのは厄介な作業でもある。 物語は普通の家族が別荘で休暇を過ごす場面から始…
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「シークレット・メロディ」若かりし日の恋の疼きが蘇るファンタジー
老若男女、人はみな胸がときめくロマンチックな出会いを求めている。特に10代の無垢な精神に包括された時期はそうした願望が強い。韓国映画「シークレット・メロディ」は見ている者が若かりし自分を思い浮かべ、…
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「ブラックドッグ」繁栄に取り残された中国の町で生きる前科者と野犬の絆
第77回カンヌ国際映画祭で「ある視点部門グランプリ」と、優れた演技を見せた犬に与えられる「パルムドッグ賞」をダブル受賞した。中国の寂れゆく街を舞台に、青年や大人、無数の野犬たちの生きざまを描く群像劇…
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「SENSEKI」逼塞の蘭学者が失明を乗り越えて挑む国防のライフワーク
この映画を見て「人間、年を取っても活躍の場はあるものだな」と感じ入った。というより、老境とは長年の経験や知識をさらに伸長させる実りの時期なのだと感心させられたのだ。 主人公は幕末、下総国古河…
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「タンゴの後で」あの衝撃作でトラウマを抱えた女優マリア・シュナイダーの絶望を描く
「ラストタンゴ・イン・パリ」――。60歳以上の人ならこのタイトルを聞いて顔に意味深な笑いを浮かべるかもしれない。 1972年にイタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督が世に放ち、世界中でセンセー…
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「愛はステロイド」田舎町の暴力に同性愛カップルの愛憎が絡むドロドロの犯罪劇
見終わったとき、「低予算でもここまで完成度の高い作品を作れるのか」と思った。田舎町を舞台にした有象無象の人間関係をダークな色調で描いている。英国出身の女流監督ローズ・グラスがメガホンを取った。世界各…
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「大統領暗殺裁判 16日間の真実」軍法裁判と全斗煥の野望を暴いた衝撃作
この映画を見終えたとき「重いなぁ」とつぶやいてしまった。韓国の朴正熙暗殺事件を裁く軍法裁判を重厚に描いた衝撃作。民主主義を失った暗黒社会とはこれほどまでに恐ろしいのかと戦慄を覚えた。 197…
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敵地で孤立した新米兵士の血みどろバトル…「ランド・オブ・バッド」で猛暑をぶっ飛ばせ!
今さら言うのもなんだけど、世の中は暑い。熱中症で倒れそうだ。こんな日は戦争映画でスカッとしたいと思い、この「ランド・オブ・バッド」を見学した。ベテランのラッセル・クロウと若手のリアム・ヘムズワースの…
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「入国審査」移住希望の若いカップルを襲った“合法の拷問劇”
いやはや、すごい新人監督がいるものだ。トランプ大統領が移民や留学生をぐいぐい締めつけている米国。この国の市民になるにはかくも困難が待ち受けているのか。スペイン映画「入国審査」を見て唸ってしまった。 …
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「木の上の軍隊」敗戦後も山中に潜伏した兵士に日本人の愚かさを見る
今年5月、自民党の西田昌司がひめゆりの塔の展示について「歴史の書き換え」と発言し物議をかもした。当の西田は言葉を撤回することもなく、シレッとした顔で7月の参院選で再選された。こうしたことから大戦末期…
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「盲山」中国政府が上映中止に追い込んだ農村人身売買の戦慄
「盲山」と書いて「マンシャン」と読むらしい。中国映画だ。2007年の公開当時、中国政府によって二十数カ所をカットされたうえに上映が禁止されたという。どんな作品なのかと思って見てみたら驚愕の内容。拉致に…
