著者のコラム一覧
増田俊也小説家

1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。

萩本欽一〈50〉世にも奇妙な父の最期「医師が『ご臨終』と言った後に、首がぐーって動いてさ」

公開日: 更新日:

 作家・増田俊也氏による連載、各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。待望の第2弾は、「視聴率100%男」として昭和のテレビ界を席巻したコメディアンの萩本欽一氏です。

  ◇  ◇  ◇

増田「やっぱり小さな運で満足してちゃだめなんですね」

萩本「運ていうことで言うと、健康というのがいちばん運に左右されるね」

増田「生き死にが関わってくる人生根源の問題ですからね。そういえば、萩本さんのお父さまが亡くなる時にちょうど萩本さんが持っていた馬がレース走ってて」

萩本「よく知ってんね、増田さん。それ俺さ、マスコミで1人ぐらいしかしゃべってないよ。そうそう。そうよ」

増田「最後、本当に病院の病床で」

萩本「そうです」

増田「ご臨終ですと言われて」

萩本「はい。先生がね、脈を取っててね『ご臨終です』って。姉ちゃんが『お父さん!』ってうわっと泣いて。そのときラジオが流れてね、ちょうど俺の馬が走ってたんだよ。俺、ボリュームどんどん上げてったの。そしたらね、真ん中ぐらいを走っていた俺の馬が、どんどん順位上げてくる。それでラジオの音量をどんどんでかくした。その時だよ、亡くなっているはずのお父っつぁんの首がぐーって動いてさ、ラジオの方に向いたんだよ。俺、驚いて先生に『先生、動いてます』って言ったの。先生もびっくりして『あれ今、動いたね』って。『あれ?』ってあらためて脈とったら『いや、亡くなってますよ』って。先生が『ご臨終してますけど、本人はまだ病室の中をさまよってるんですかね』って言ってた」

増田「先生が」

萩本「うん。脈はないんだけど、まだその辺うろうろしてたんでしょう。面白いよね。医療の話するとね、俺、今、病院通いをかなりしてんだよ」

増田「はい」

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