長野県小海町長は発見時に死亡…キノコ狩りで遭難事故が絶えない“名人”ならではの事情と文明の利器の盲点
AIの毒キノコ判定は役に立たない
キノコ狩りの遭難と並んでなくならないのは、毒キノコによる食中毒である。前述の通り、今年は雨が降り続いたためキノコが大豊作で、キノコ狩りを趣味にする人にとってはたまらないシーズンになっている。しかし、食用キノコが豊作なら、毒キノコも豊作なわけで、例年以上に注意を要する必要がある。
さて、これまで食中毒では、一定のパターンがあって、食用と姿が似た毒キノコを採取して、誤食するのが一般的だった。たとえば、ホンシメジ(食用)とクサウラベニタケ(毒)、ヒラタケ(食用)とツキヨタケ(毒)などだ。また、前述のクサウラベニタケやツキヨタケは、見た目がいかにもおいしそうに見えるため、「これなら食べられるだろう」という思い込みも働きやすく、中毒に至るケースも少なくない。
ところが、近年は、“新たなルート”で毒キノコ中毒が発生している。その原因になっているのはAIだ。AIに写真を提示して、「これは食べられる?」と質問すると、「これは食べられるキノコです」と回答されたものの、いざ食べてみると、実は毒キノコだった──というパターンである。これは水面下で相当数起こっていると考えられ、キノコ研究者も警告している。
キノコほど、AIが見分けることが苦手なものは他にないと思われる。形が似ているだけでなく、色もそっくりで、傘やひだのアップといった細かい特徴をAIに見せても、間違った情報を提示されることが多いのだ。AIの信頼性が怪しいジャンルだが、今やAI全盛時代だけに、その乏しい信頼性が知られておらず、多くの人がAIを使って自然観察を楽しんでおり、その延長でキノコの食毒を調べようとしているようである。
■出掛けるときは必ず複数で
キノコはとにかく素人には見分けるのが非常に難しい。生えている条件によっても形も色も大きさも違ってくる。また、未だに流布している「色が派手なキノコは毒で、地味なキノコは食べられる」「縦に割けるキノコは食べられる」といったキノコ狩り界隈の通説は、すべて迷信であり、当てはまらないことがほとんど。要注意である。
毒キノコの見分け方にコツのようなものはなく、毒キノコも1個1個覚えていくしかないのである。専門家が開催するキノコ狩りの教室などに通うなどして、知識を身に付けていないうちは、野生のキノコを採取して食べないことが重要である。
前述したように山に入る時は2人以上を心掛けたい。これだけでも、確実に遭難のリスクを下げることができる。詳しい人と一緒に行けばキノコを間違って食べることもないだろうし、何より実物を見ながら勉強することができる。とにかく山に入るときは慣れている人と複数が鉄則であることを肝に銘じるべきである。
(文=山内貴範)

















