五木寛之 流されゆく日々
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連載10191回 健康論の移り変り <3>
(昨日のつづき) したり顔で健康論などを書いているうちに、ギックリ腰が再発して、ほとんど歩けなくなってしまった。 左脚の痛みをかばって、不自然な歩き方をしていたせいだろう。 以前から年に2…
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連載10190回 健康論の移り変り <2>
(昨日のつづき) 戦後、しばらくのあいだは健康論はジャーナリズムのテーマではなかった。とりあえず食って生きることが、最大の課題だったからである。 バクダンと称するアルコール飲料を飲み、ヒロポン…
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連載10189回 健康論の移り変り <1>
健康論にも流行がある。そもそも健康論がジャーナリズムで大きな位置を占めるようになったのは、高齢化社会の影響だろう。 100歳以上の長寿者が5万人をこえたのは、もうかなり前のことだ。 「人生五○…
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連載10188回 今は昔のものがたり <5>
(昨日のつづき) 灘さんから作詞を頼まれたときに、思ったのは、こういうことだった。当時のことを書いた『流されゆく日々』(1978年)の文章の続きである。 <(承前)小生の見るところ、小島さんの…
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連載10187回 今は昔のものがたり <4>
(昨日のつづき) 麻雀の席で、小島武夫さんからレコードの歌詞を頼まれた話の続きである。 1978年8月の日刊ゲンダイ『流されゆく日々』に書いた文章だ。 <(承前)初めは冗談だと思っていました…
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連載10186回 今は昔のものがたり <3>
(昨日のつづき) 1978年8月1週の『流されゆく日々』の中にも小島武夫さんの名前がでてくる。『昔の名前で書いてます』というふざけた題名だが、小島さんのレコードの歌詞を書いたいきさつが出ているので…
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連載10185回 今は昔のものがたり <2>
(昨日のつづき) CSテレビの小島武夫さんの特番にちょいと出演した時の話の続きを書く。 「イツキさんは小島さんと最初どんな具合いで出会われたんですか」 と、最初に質問された。 「そうですね…
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連載10184回 今は昔のものがたり <1>
先週、麻雀名人の小島武夫さんと何十年ぶりかで会った。 小島さんは、阿佐田哲也さん亡きあとの麻雀界を支える重鎮である。 出身が私と同じ福岡とあって、若い頃から或る種の親密感をおぼえていた。 …
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連載10183回 ある若い人との雑談 <5>
(昨日のつづき) 「よく言われることだけど、最近、活字を読む人が少くなったそうだね。きみたち若い人の目から見てどうですか」 「いや、そんなことはないと思います」 「K君は?」 「活字を読む人が…
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連載10182回 ある若い人との雑談 <4>
(昨日のつづき) 「ところでイツキさんは、最近、体調のほうはどうですか。なにか特別な健康法とかやってらっしゃらないんですか」 「相変らずだね。もっとも、この数年ずっと左脚の調子が悪くて苦労してるん…
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連載10181回 ある若い人との雑談 <3>
(昨日のつづき) 「若いお二人にききたいんだけど、最近、高齢者の運転事故がしきりに問題になってるよね」 「新聞記事などでも、必ず年齢を見出しに入れるとか、プレッシャーが強まってます」 「そう。先…
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連載10180回 ある若い人との雑談 <2>
(昨日のつづき) 「おや、A君も顔を見せたか。おひさしぶり」 「ごぶさたしてます。K君とご一緒だときいたもんですから。割り込んですみません」 「いやいや、ひさしぶりに締切りの催促じゃないお喋りを…
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連載10179回 ある若い人との雑談 <1>
「最近の世相はどうですか」 と、若い編集者のK君にきいてみる。 「最近の世相って、べつにイツキさんが隠居しているわけでもなし、ご覧のとおりです」 「隠居しちゃいないけどね、自分の感じ方といまの…
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連載10178回 自分自身のための広告─近況・新刊・連載・その他─ <5>
(昨日のつづき) このところ仕事部屋にこもって、原稿を書いたり、本を読んだりして終日、過ごすことが多い。 年をとると、いろんなことが面倒になるものだ。出不精もそうだし、対人関係のややこしさも負…
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連載10177回 自分自身のための広告─近況・新刊・連載・その他─ <4>
(昨日のつづき) 目下、体調のほうはあい変らずだ。 左脚の痛みは、この3、4年ずっと続いているが、そのほかは現状維持の態。 脚の痛みは、変形性股関節症と診断されているが、これという打つ手な…
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連載10176回 自分自身のための広告─近況・新刊・連載・その他─ <3>
(昨日のつづき) きょうは矢来町の新潮社の社内で、『親鸞をめぐる雑話』の3回目の講話である。 大阪からわざわざやってこられたご夫婦などを含めて、80名あまりの受講者に1時間45分あまりの話をす…
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連載10175回 自分自身のための広告─近況・新刊・連載・その他─ <2>
(昨日のつづき) 昔の流行作家というのは、俗にいう「カンヅメ」というのをよくやったものだった。「カンヅメ」とは、自宅を離れて、どこかホテルの一室とか旅館などに閉じこもることである。怠けないように作…
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連載10174回 自分自身のための広告 ─近況・新刊・連載・その他─ <1>
昨日、岐阜の大野町というところへ行ってきた。地元の文化協会設立30周年の記念行事で講演をするためである。 文化的な団体や組織は、全国で数えきれないほどある。しかし、最近、この国で文化を軽視する風…
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連載10173回 シベリア出兵の幻影 <5>
(昨日のつづき) チェコ軍団の話はひとまずおいて、というのは、この件について考えるとコラムの1回や2回ではすまなくなるからだ。 国民に不人気だったシベリア出兵、とはどういうことか。 日清、…
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連載10172回 シベリア出兵の幻影 <4>
(昨日のつづき) 正式の出兵以前から、軍はシベリアに進出したくてうずうずしていたと言っていい。 すでに出兵の数年前から、特務機関、その他のグループがシベリアで活溌な工作を展開していたのだ。石光…