著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

公開日: 更新日:

 とんでもないドラマが登場した。13日に始まった、放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK、全3話)だ。

 物語の舞台は100年後。40年続いた火星移住が見直され、地球への帰還が始まる。リリ-E1102(スリ・リン)も、母タキマ(宮沢りえ)や恋人アオト(菅田将暉)が待つ地球に向かおうとしていた。だが、帰還反対派に拉致されてしまう。タキマが移住管理組織の日本支局長だからだ。

 さらに火星では、科学者カワナベ(吉岡秀隆)が超常現象を引き起こす「謎の物質」を発見していた。プルトニウムを超えるエネルギー源となり得る超重元素である。

 本作にはいくつもの「隠喩」が潜んでいる。地球出身者が火星社会で優位に立ち、火星生まれの人々が抑圧される構造は、歴史的な植民地支配や現代のグローバル資本主義の縮図に映る。「未来社会でも格差や差別は消えない」という寓話なのかもしれない。

 また「謎の物質」が引き起こす超常現象はAIや量子技術、さらには地球環境そのものの暴走を思わせる。その「制御不能な力」は人類にとって希望なのか脅威なのか。

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