五木寛之 流されゆく日々
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連載10138回 対談すんで日が暮れて <1>
「戦友」という軍歌をご存知だろうか。 たぶん戦後生まれの方々には、なじみのない歌だろう。 軍歌とはいうが、なんともセンチメンタルな歌である。見方によっては反戦歌のようにもきこえる歌だ。日露戦争…
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連載10137回 ニュースのバブルから <5>
(昨日のつづき) 午後1時すぎに起床。 昨夜も早朝まで仕事をしたので、やや睡眠不足の感あり。 そういえば昨日の夕刊に、「72歳タクシー3人はねる」という見出しの記事がでていた。この「72歳…
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連載10136回 ニュースのバブルから <4>
(昨日のつづき) きょうは福岡に来ている。 西日本新聞社140年記念の講演に呼ばれてやってきたのだ。 前夜、ほとんど寝ていなかったので、全日空の機内で爆睡。 西日本新聞は、私にとっては…
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連載10135回 ニュースのバブルから <3>
(昨日のつづき) 稀勢の里の優勝で大いに沸いた。国技といい、国技館と自称するくらいだから、日本人横綱の勝敗に一喜一憂するのも当然だろう。ナショナリズムの感情というのは、どこの民族にも共通のものであ…
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連載10134回 ニュースのバブルから <2>
(昨日のつづき) ふだんサッカーや野球などに関心がないくせに、国際試合になるとテレビに釘付けという人がいる。 バレーボールや卓球などもそうだ。 「あんたがサッカーに興味があるとは知らなかった…
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連載10133回 ニュースのバブルから <1>
このところテレビは、森友学園のカゴイケさんに占領されてしまった感がある。 「結構、キャラが立ってるよね、あの人」 「国会に証人喚問されても、ぜんぜんビビらないんだからな。いい度胸してるよ、まった…
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連載10132回 文章をしのぐ挿絵の力 <4>
(昨日のつづき) 私ごとで恐縮だが、『青春の門』の第一部をスタートさせた時の挿画は、風間完画伯だった。 風間さんは当時、すでに大家の列につらなる有名画家である。井上靖さんと組んでの新聞連載の挿…
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連載10131回 文章をしのぐ挿絵の力 <3>
(昨日のつづき) 「描写のうしろに寝ていられない」 というのは、たしか高見順の言葉だったように思う。当時は、その言葉をめぐって、さまざまな論争がくりひろげられたものだ。 高見順といっても、最…
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連載10130回 文章をしのぐ挿絵の力 <2>
(昨日のつづき) 私たちの子供の頃までは、紙芝居というものがあった。最近では、紙芝居といっても、ほとんど死語である。くわしく説明しないと、いまの若い人にはなかなかわかってもらえないようだ。 自…
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連載10129回 文章をしのぐ挿絵の力
若いころ、林達夫さんにいろいろ話をうかがう機会があった。いまになってみると、実に貴重な時間だったと思う。大学を途中でヨコに出た私としては、その後、出会った先輩がみな先生だったといっていい。 旧平…
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連載10128回 なんてったって文庫 <5>
(昨日のつづき) 年をとったら小さな部屋の前後左右に文庫だけの本棚を作りたい。そして終日、本を読んですごしたい。 ある人にそう言ったら、 「年をとったらって、もう十分に年をとってられるんじゃ…
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連載10127回 なんてったって文庫 <4>
(昨日のつづき) 文庫本のことで思いだす話がある。日中戦争のころのエピソードである。 直接、ご本人から聞いた話だが、ディティールは正確におぼえていない。戦時中の挿話として読み流していただきたい…
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連載10126回 なんてったって文庫 <3>
(昨日のつづき) 電子書籍もそこそこに普及しつつあるようだが、文芸の分野ではまだまだだ。 1カ月いくらと定額で多くの雑誌や新聞が読めるのは、たしかにすごい。 だが、小説という分野に関しては…
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連載10125回 なんてったって文庫 <2>
(昨日のつづき) 文庫には、一般に解説というやつがついている。本来なら本文を読み終えた後に、おもむろに解説に目を通すべきだろう。それが文庫読みの定跡である。 しかし私は昔からどうしても解説のほ…
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連載10124回 なんてったって文庫 <1>
私は文庫が好きだ。最近、新書もよく読むようになったが、やはりベースは文庫である。 文庫といえば、昔はもっぱら岩波文庫のことだった。戦後、いろんな文庫が出た。その中でも妙に印象がつよいのは、アテネ…
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連載10123回 最近見なくなった光景 <5>
(昨日のつづき) 道路の端に車をとめて、何やら困惑している光景というのも、あまり見なくなった。ラジエーターから白い煙が出ていたり、タイヤの交換をしたりしているらしい。 そもそもタイヤがほとんど…
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連載10122回 最近見なくなった光景 <4>
(昨日のつづき) (昨日のつづき) 最近、見かけなくなったものの一つに、クリスマスの夜の酔っぱらいオッちゃんたちがいる。 昔は、なぜか金や銀の長帽子をかぶり、手に土産物のケーキの箱をさげた中…
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連載10121回 最近見なくなった光景 <3>
(昨日のつづき) 本屋さんの店先で立読みをしている人の姿を見なくなった。それも当然である。店員さんの視線を気にしながら、売場で立ち読みしなくても、椅子に坐って気楽に読めるのだから。 昔は長時間…
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連載10120回 最近見なくなった光景 <2>
(昨日のつづき) そういえば近頃まったく見なくなったのが、女性の立ちションである。 昔は、などといっても江戸時代ではない。戦後しばらくたってからも、田舎では女性の立ちションはめずらしくなかった…
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連載10119回 最近見なくなった光景 <1>
平成も29年ともなれば、昭和という時代がはるか遠いもののように思われてくる。 昭和歌謡などもそうだ。きっと今の若い人たちには、小唄、端唄か、都都逸のように感じられるのだろう。いや、都都逸などとい…
