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五木寛之 流されゆく日々

1932年福岡県生まれ。早稲田大学露文科中退。66年「さらばモスクワ愚連隊」で第6回小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞。76年「青春の門 筑豊篇」ほかで第10回吉川英治文学賞を受賞。2002年には第50回菊池寛賞を受賞。NHKラジオ深夜便「歌の旅人」、BSフジ「五木寛之『風のcafe』」放送中。日刊ゲンダイ本紙連載「流されゆく日々」はギネス記録を更新中で、16年9月5日に連載10000回を迎えた。著書に「風の王国」「大河の一滴」「他力」ほか、「親鸞」三部作など多数。

連載10100回 アメリカ・アズNo1 <2>

(昨日のつづき)
 アメリカの栄光はB29でもなければ、宇宙ロケットでもない。『サマー・タイム』や『ラプソディー・イン・ブルー』あればこそである。それは移民の子、ガーシュインの創りだしたアメリカの文化的独立宣言だった。
 それだけではない。そのガーシュインに、「アメリカのシューベルト」と言わしめた天才的音楽家がアーヴィング・バーリンだった。
 歳末になると世界のどの街にも流れる『ホワイト・クリスマス』のメロディーは、ベラルーシ生まれの移民の作詞・作曲になるものである。『ブルー・スカイ』や、アル・ジョンソンのうたった『イースター・パレード』や『アレキサンダーズ・ラグタイム・バンド』の作者は、5歳のときにアメリカに移住してきた。「第二のアメリカ国歌」といわれる『ゴッド・ブレス・アメリカ』は、移民の音楽家によって作詞・作曲されたものなのだ。
 少年のころ私たちの胸をときめかせたアメリカは、西部劇のアメリカ、開拓のアメリカだった。
『OK牧場の決闘』『ハイ・ヌーン』『ローハイド』などは、その主題曲、音楽とともに記憶に残っている。

〽ローレン ローレン  ローレン
 
 というリフレインに、戦後の少年たちはどれほど胸をときめかせたことか。
 この、まさにアメリカ的世界の表現者が、ディミトリー・ティオムキンだ。本名がドミトリーときいただけで、移民であることがわかる。彼はまさにアメリカ文化を代表する音楽家だった。『老人と海』や『ジャイアンツ』などの音楽も忘れがたい。
 ポピュラー音楽の世界をさっと眺めただけでも、私たちがアメリカ的、アメリカ文化として受けとっている世界が、実は多くの移民たちによって築かれたものであることがわかる。
 そもそもアメリカは、移民の国ではなかったのか。
〈アメリカ合衆国〉
 という〈合衆〉の意味は、多くの移民が入り混じり一体となって国を築いたということではないか。サローヤンはトルコ南部から移住してきたアルメニア人の子である。彼の遺骨はカルフォルニアとアルメニアの両方に分骨されたそうだ。まさに移民作家としてアメリカを代表した。アメリカとは、そういう移民の国として世界のNo1大国だったのだ。
(この項つづく)
――協力・文芸企画

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