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五木寛之 流されゆく日々

1932年福岡県生まれ。早稲田大学露文科中退。66年「さらばモスクワ愚連隊」で第6回小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞。76年「青春の門 筑豊篇」ほかで第10回吉川英治文学賞を受賞。2002年には第50回菊池寛賞を受賞。NHKラジオ深夜便「歌の旅人」、BSフジ「五木寛之『風のcafe』」放送中。日刊ゲンダイ本紙連載「流されゆく日々」はギネス記録を更新中で、16年9月5日に連載10000回を迎えた。著書に「風の王国」「大河の一滴」「他力」ほか、「親鸞」三部作など多数。

連載10103回 アメリカ・アズ・No1 <5>

(昨日のつづき)
 最近、人口論が話題になっているが、日本の人口についても意外に思うことが少くない。
 たとえば、縄文晩期(紀元前2900年)あたりのこの列島の人口が、7万6000人と聞けば誰でもびっくりするだろう。
 縄文前期(紀元前5200年)は10万6000人、そして最も人数が多かった縄文中期が26万人であるという。いちど増えて、なんらかの理由で激減したのだ。
 その縄文晩期から弥生時代に移って、1800年前頃になると、これが驚ろくべき増え方をする。なんと弥生時代には59万5000人と、60万人弱の人口となるのだ。さらに奈良時代にはいると、451万2000人と、ケタ違いの人口となる。
 もっとも400万人といったところで、現在の1億3000万弱とはくらべようもない。
 しかし、この縄文晩期から弥生時代に移る際に異常な人口増が見られる理由は、一体なんだろうか。10万余から60万弱というのは、ただごとではない。
 勝手な素人考えだが、農耕の技術をもった異邦人が大陸・半島から大挙して移民してきたのではあるまいか。生産技術が向上すれば当然、食糧も十分だろう。人口も増えておかしくない。
 ただ農耕がはじまり、食糧が自給できるようになっただけではないのではないか。縄文晩期から弥生時代にかけて、大量の人口流入があったと考えたほうが自然である。技術は人とともに伝わるノウハウである。どこの国でも異民族、異文化との接触、交流のない例はなかった。100年先は4000万台にまで減少すると予測される日本列島も、幾度かそのような体験を重ねて維持されてきたのではあるまいか。
 以前、奈良を歩き回ったとき、
「このあたりでは、古く渡来した家は古木姓を名乗り、比較的新しく移住してきたグループは新木、荒木を名乗っているようです」
 と、地元の郷土史家の人に聞いたことがあった。
 北欧では南からきた流浪の民、ロムもかなり多くオーロラの下に定住していた。
 京都が日本の中の異国であったことは、言うまでもない。世界は混交する。それが自然だ。
 いまの流れを見ていると、国境を閉じる、異民族、異文化、外国製品の流入を止める方向へ世界が動きつつあるようだ。いつわりのグローバル化は、いつわりのナショナリズムに終るのである。
(この項おわり)
――協力・文芸企画

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