生誕100年 池波正太郎の街を歩こう
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墨田高札七番「常泉寺」の巻 女房むすめをおもちゃにする大悪党
池波正太郎さんの書く悪役はどれも、凄だまなので、鬼平や秋山小兵衛や梅安も大層苦労するのだが、それだから小説が面白くなる。 「正月四日の客」は、枕橋の北詰めにある蕎麦屋「さなだや」の項で紹介した…
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墨田高札六番「西尾隠岐守屋敷」の巻 震災記念堂の脇に住んでいた流行作家
高札に書かれた西尾隠岐守屋敷は業平1丁目にあったようだ。 西尾隠岐守の下屋敷は池波正太郎さんの短編「敵」の中で、「(おれの跡を、だれかがつけて来ている……)五郎蔵は、そう感じた。そこで、橋を…
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墨田高札五番「三囲神社」の巻 池袋・三越のライオン像が睨みを利かせている
「剣客商売」の「毒婦」では秋山小兵衛が長命寺や木母寺を過ぎて、三囲稲荷の前まで来ると「ついと、土手道に面した一ノ鳥居をくぐり、社の方へ」歩を進めた。「この小梅村にある三囲稲荷社は、田中稲荷などとも呼ば…
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墨田高札四番「みめぐりの土手」の巻 傾く芝居にホームレスは付き物なり
「みめぐり土手」と聞いてすぐ思い浮かぶのは、「法界坊」とも呼ばれている歌舞伎狂言「隅田川続俤」である。奈河七五三助が書き下ろして1784(天明4)年に初演された。 近年では2000年、18代中…
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墨田高札三番「枕橋 さなだや」の巻 大盗賊がすする辛いつゆの蕎麦
北十間川は木材などの運搬用として、1663(寛文3)年に開削された運河である。水戸藩邸の前に架かる源森橋から源森川とか源兵衛堀などと呼ばれていた。隅田川に一番近い橋は源兵衛橋とも枕橋とも呼ばれていた…
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墨田高札二番「如意輪寺」の巻 並木の藪の仇を吾妻橋やぶそばで討つ
長谷川平蔵の剣友・岸井左馬之助はすっかり「火盗改メ」の仲間になった気でいる。今も、盗賊・大滝の五郎蔵の後をつけて、如意輪寺門前の花屋へ入るのを見届けたところだ。池波正太郎さんは「鬼平犯科帳」の短編「…
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墨田高札一番「吾妻橋」の巻 芥川龍之介の短編「ひょっとこ」を思い出した
墨田区の高札は鬼平が活躍するところを選んで「鬼平情景」となっている。吾妻(大川)橋は台東区編で14番目に訪ねている。ここ墨田区ではいの一番に訪ねることになっている。同じ橋を西と東から訪ねるわけだ。高…
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高札十六番「浅草・御厩河岸」の巻 安藤広重の「吾妻橋金龍山遠望」が圧巻
「浅草・御厩河岸」は池波正太郎さんが1968(昭和43)年の「オール読物」新年号「唖の十蔵」から始める「鬼平犯科帳」シリーズの先駆けのように、前年12月号に発表した作品である。 その記念すべき…
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高札十五番「駒形堂と酒飯・元長」の巻 若女房おはるに似た「駒形どぜう」の中居の客あしらい
吾妻橋西詰から下りて川沿いの散歩道を下流に向かう。土曜日のせいか、大勢のランナーに抜かれる。すぐに駒形橋に着く。駒形橋は江戸時代にはなかった橋で、震災後1927(昭和2)年に架けられたもので、ここで…
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高札十四番「大川橋」の巻 吾妻橋ともいわれ、浅草・花川戸から本所・中之郷へ架かる大橋
大川橋は池波正太郎さん「剣客商売」の「暗殺」に紹介されている。 「大川橋は浅草の花川戸から本所・中之郷へ架かる長さ八十四間、幅三間半の大橋で、数年前に、この橋が大川に架かったときには、大和国か…
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高札十三番「船宿・嶋や」の巻 池波正太郎の碑から「めぐりん」で三ノ輪へ
今戸橋の南詰めにある待乳山聖天宮の下の池波正太郎さん生誕の碑から都道を渡って山谷堀広場にある高札十三番「船宿・嶋や」を見る。待乳山聖天宮は浅草駅から歩いてすぐである。古地図では山谷堀にかかった今戸橋…
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高札十二番「本性寺」の巻 剣客商売・秋山小兵衛と大治郎親子にとって大切な寺
地下鉄浅草駅からミニバス「めぐりん」の北回りに乗って「剣客商売」の本性寺を目指す。バスは手前で都道314号からそれてしまうので、間違わないように窓の外を見ていたら、今戸神社が見えた。ここも池波作品の…
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高札十一番「井筒」の巻 白鬚橋西詰め近く、橋場に設定された創作上の店
浅草・橋場の料亭「井筒」は仕掛人・藤枝梅安のなじみの店だ。「橋場の不動院・境内の北面にあり、竹藪を背に、思川のながれをへだてて彼方に真崎稲荷社の杜をのぞむ風雅な構え」だそうな。「おんなごろし」では梅…
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高札十番「阿部川町」の巻 平蔵と左馬之助が落ち合う浅草・奥山が見つけられない
阿部川町は池波正太郎さんの時代小説作品にしばしば登場する。「剣客商売」の「金貸し幸右衛門」ではこうだ。 「用意の提灯に火を入れた幸右衛門は、その大通りへは出ずに、新堀川沿いの道を南へすすみ、阿…
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高札九番「牛堀九万之助の道場」の巻 三味線堀跡近く、おかず横丁のあとは五目そば
鳥越神社の辺りは台地だった。浅草御蔵用地埋め立てのため削られた台地の3つの神社のうち、第六天神社は柳橋に移転し、熱田神社はやや北に移転、そこが新鳥越となり、居残った鳥越神社の北側が元鳥越となった。 …
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高札八番「浅草・鳥越橋」隅田川と平行に走っている御蔵前通りが「鬼平犯科帳」の舞台
幕府家臣団の旗本・御家人に給する切米や扶持米を収納するために隅田川右岸を埋め立ててつくった米蔵を浅草御蔵という。池波正太郎さんの「鬼平犯科帳」の「浅草・鳥越橋」は浅草御蔵に沿って、つまり隅田川と平行…
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高札七番「大名・石川日向守の屋敷」広小路を南へ…鈴本の前に来て寄席を楽しむ
JR御徒町駅南口を出て、まっすぐ、黒門児童公園の高札が見える。高札にある通り、「鬼平犯科帳」の短編「五月闇」ではこのあたりにあった「石川日向守」の屋敷がおもな舞台の一つだ。だが、高札の周囲はビルばか…
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高札六番「浅草・平右衛門町」なんだか鬼平にごちそうになっている気分になった
高札は台東区にあるのだが、墨田区にあるJR両国駅に降りたのは魂胆が2つあるからだ。 「鬼平犯科帳」の「網虫のお吉」で、同心・小柳安五郎が本所方面から両国橋を渡り、神田川に沿った河岸道を歩んで平…
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高札五番「寛永寺・車坂」上野のお山から下り、うまいメンチで一杯!
JR上野駅公園口から東京文化会館に出る。住所は上野公園5丁目45番。高札五番が立っているのはここのはずだが、会館をほぼ一周しても高札は見つからない。さらにインフォメーションセンター、交番、正岡子規記…
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高札四番「要伝寺とその界隈」坂本の地名はすべて根岸になり路がクネクネと曲がり
鴬谷の南口を出て、陸橋脇の急な階段を下りてまっすぐ言問通りに向かうと要伝寺はその先にある。 「剣客商売」の「女武芸者」には、佐々木三冬が「坂本二丁目と三丁目の境の小道を左に切れ込んで、小生意気…