人間出生図巻
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さくらももこ「国民的漫画家の個人的な生き方」(1)“現代の枕草子”生みの親のクールな視点
自他ともに認める“怠惰な性格”のさくらももこ(本名・非公表)は「“高校生になったら、漫画を描いて投稿しよう”と思っていた」(「ひとりずもう」さくらももこ、以下同)にもかかわらず、「何もせずにヘラヘラ…
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千葉真一「アメリカンドリームズ」(3)夢を追い求める血脈は真田広之に継承された
千葉真一の初監督作品「リメインズ 美しき勇者たち」(一九九〇年)は興行的に失敗し、千葉は二億円の借金を抱えた。もちろん映画製作に当たり外れはつきものだが、千葉が経済的な苦境に追い込まれたのはこの映画…
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千葉真一「アメリカンドリームズ」(2)アクション俳優から演技派へ。東映の社長に直談判
人生の転機はしばしばふいに訪れる。そして素直に転機を受け入れるときは、すでにその必要性を無意識に自覚していた場合が多い。 「キイハンター」(TBS系)が継続中の一九六九年、千葉真一は中島貞夫監…
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千葉真一「アメリカンドリームズ」(1)「キイハンター」では敵と味方双方のアクションを吹き替えで演じた
日本でプレーするプロ野球選手の多くがメジャーリーガーを夢見るように、多くの日本人俳優にとってアメリカ=ハリウッドへの進出は永遠の夢か、あるいは本能とでもいうべきものかもしれない。 千葉真一(…
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田中好子「その日までさようなら」(3)余命二カ月であることを告げた夫に謝りながら泣いた
田中好子が巨匠・今村昌平監督の抜擢で「黒い雨」の主演女優に選ばれたのは一九八九年のことである。 ──四五年八月六日午前八時十五分、広島に原爆が投下された。井伏鱒二の同名の原作小説では、爆心地周…
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田中好子「その日までさようなら」(2)解散後、弟の介護に専念していた好子の復帰を萩本欽一が後押し
キャンディーズの突然の解散・引退宣言は驚きをもって迎えられ、「普通の女の子に戻りたい」という伊藤蘭(ラン)の叫びは流行語にもなった。渡辺プロの社員は誰も事前に知らされておらずメンツは丸つぶれである。…
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田中好子「その日までさようなら」(1)キャンディーズ突然の引退宣言を事前に知らされていた者は一人もいなかった
ことさら世代間の分断が叫ばれる現代では想像しづらいことだが、一九七〇年代の日本には祖父母の代から孫の代までを一手に引き受けるアイドル三人組が存在した。それが七三年に結成されたキャンディーズである。 …
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内田裕也・樹木希林「ハードロック・カップル」(4)2人は晩年、月に一度は会うようになった
「八〇年代の日本映画に殺気を走らせた俳優が松田優作なら、不穏な空気を漂わせた俳優が内田裕也だった」(「なぜ80年代映画は私たちを熱狂させたのか」伊藤彰彦、以下同) 俳優としての内田裕也が独自の…
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内田裕也・樹木希林「ハードロック・カップル」(3)希林がトラブルメーカーの裕也と別れなかった理由
内田裕也の代名詞といえば周知の通り“ロックンロール”である。裕也が言うロックの意味は“生きざま”に近いものだが、裕也が悠木千帆(のちの樹木希林)を妻に選んだ以上、千帆もまた“ロックな女”なのである。…
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内田裕也・樹木希林「ハードロック・カップル」(2)希林の最初の結婚は4年で破綻した
悠木千帆(のちに樹木希林、結婚前の本名・中谷啓子)は、一九四三年一月十五日、東京府東京市神田区(現・東京都千代田区)で生まれた。元警察官の父は母が経営するカフェの主人に納まり、趣味で演奏する薩摩琵琶…
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内田裕也・樹木希林「ハードロック・カップル」(1)希林にとって裕也は、余人に替え難い価値があった
内田裕也(本名・内田雄也)と悠木千帆(一九七七年四月から樹木希林、本名・内田啓子、旧姓・中谷)が結婚したのは七三年のことである。千帆は七六年に長女・也哉子を出産。その直前から裕也とは別居生活が続いて…
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渡哲也「闘う家長の忍耐と狂気」(3)裕次郎の病状悪化に「変わり果てた姿を世間に晒すくらいなら、私の手で…」
ここで渡哲也が石原プロへ入社した経緯を振り返っておこう。 石原プロ製作の「黒部の太陽」(熊井啓監督、一九六八年)は観客動員数八〇〇万人、配収七億九〇〇〇万円の記録的ヒットになり、翌六九年の「…
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渡哲也「闘う家長の忍耐と狂気」(2)演技や批評においても遠慮も忖度もない“清冽な狂気”が哲也流
「黒部の太陽」(熊井啓監督)の製作で裕次郎が窮地におちいったことを知った慎太郎は東宝の幹部に会って理を説いた、というより少々オーバーに脅し上げた。 もしこの記念すべき作品が映画会社の五社協定で…
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渡哲也「闘う家長の忍耐と狂気」(1)高校時代は喧嘩三昧。謹慎、停学はしょっちゅうだった──
渡哲也(本名・渡瀬道彦)を評して、国文学者の松田修はこう記した。 「かつてもっとも反家父長的であった者こそ、もっとも優れて今、家父長なのだ。そしてかつての家父長は力であった。今の家父長は引受け…
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飯島愛「愛すれど心かよわず」(3)自著「プラトニック・セックス」で不倫、中絶などの過去を衝撃告白
飯島愛は一九八八年に十六歳で家出して以降、独力で人生を切り開き、二十歳のころにはすでに有名人になっていた。このサバイバルストーリーにはバブルという時代背景が色濃くある。 愛が東京・湯島のカラ…
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飯島愛「愛すれど心かよわず」(2)私生活とは裏腹に、AV出演に関しては小気味いいほど割り切っていた
一九九二年三月、十九歳でAVデビューした飯島愛は、同年一月から事前のプロモーション活動で深夜番組「ギルガメッシュないと」(テレビ東京系)にレギュラー出演。“Tバックの女王”として人気を集める。少しあ…
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飯島愛「愛すれど心かよわず」(1)毒親に反発し万引、カツアゲを繰り返す 貢ぐために自分の体まで売った
一七〇万部のベストセラーになった飯島愛(本名・大久保松恵)の自伝「プラトニック・セックス」では、過剰なまでに教育熱心でしつけの厳しい家庭に育った娘が、札付きの不良に変身していく過程を克明に記している…
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ジョー山中「黒人混血スターの戦後」(3)根底にあったロック魂「俺の『陣地』は音楽以外にない」
「キクとイサム」(一九五九年)という今井正監督の映画がある。これは会津・磐梯山のふもとに住む黒人混血児の姉弟を描いた成長物語である。 キク(十二歳)とイサム(九歳)の家には父も母もいない。わん…
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ジョー山中「黒人混血スターの戦後」(2)映画「人間の証明」のテーマ曲で一躍、時の人に…
混血児養護施設の幸保愛児園を出た山中明は、高校進学の勧めを断って自動車修理工場で働き、その後、喧嘩の強さを買われてボクシングの協栄ジムにスカウトされる。リングネームを城アキラとした明は十七歳でプロデ…
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ジョー山中「黒人混血スターの戦後」(1)七人兄弟のうち彼だけ、父が進駐軍の黒人兵だった
ごく私的な話になる。小学五年生のとき、黒人混血児のO君と同級になった。“ハーフ”という言い方はまだなかった。O君には知的障害があり、ほとんど言葉を発したことはない。身体的にも虚弱で、服装などからO君…