あいつらの末路
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(117)手には包丁が握られていた
──ようやく自宅に到着。胸騒ぎがますます激しくなります。そんな私を心配し、晃一くんも一緒にタクシーを降りました。玄関の前に来たときです。ドアが勢いよく開きました。そこにいたのは、血まみれの父。その手…
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(116)あの日、父親から逃げ出したんです
「そうです。私は、石塚孝道の元妻で、離婚したあとも内縁関係は続いていました。私が、遺体を引き取るのが筋だと思います」 草野百々子は、目の前の警官にそう答えた。 そして、去年の暮れ、孝道…
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(115)事件がまるで大昔の話のよう
「あれから、半年が経つんですね」 目の前に広がる新緑を眺めながら、睦代は昔話を語るように呟いた。 五月の連休も過ぎ、世の中はすっかり初夏の趣だ。新宿御苑に程近いカフェで、朝美はすすすっ…
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(114)私はこの街が憎いんだよ!
「そうだよ、私は、この街が憎いんだよ! この街の住人がね!」 管理人さんが、絶叫するように言った。 「なんでもかんでも、私に用を押し付けやがって。私を顎で使いやがって。見下しやがって! …
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(113)息子は人がかわったように憔悴
管理人さんは、口元にへばりついたふかし芋をティッシュで拭うと、語りはじめた。 ──八神隼人とうちの主人は大学が同じで、顔見知りだったんです。とはいえ、友人ではありませんでした。八神隼人は今で…
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(112)「マダムの館」で秘密のアルバイト
「それで管理人さんは復讐しようと、二月十四日、八神家に向かったんだよね?」 咲良ちゃんが繰り返す。……もうやめて! これ以上、犯人を刺激しないで! 朝美は、祈るように顔の前で両手を合わせた。が…
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(111)息子さん、公園で自死してるよね
「そもそも、どうして、ご主人はリストラされたの?」 咲良ちゃんの質問が止まらない。 「バブルが崩壊して、それで──」 「直接の原因は他にあるんでは?例えば、ご家族に不幸があって、そ…
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(110)あたしの家に住んでいたんでしょう?
そして、朝美たちはリビングに通された。つい先日、ここに来たばかりだというのに、ひどく懐かしい感じがする。……そうだ。ここでふかし芋をいただいたんだった。美味しかったな。あのお茶も。 「頂き物で…
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(109)ハワース・インの前に規制線が
朝美がそのニュースを見たのは、今朝のことだった。タクシーを飛ばして破輪洲駅に到着したとき、まずは同行している咲良ちゃんがそれを見つけ、「おばさん、また事件だって」と、教えてくれた。 「やっぱり…
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(108)手首に残る29年前の生々しい傷跡
草野百々子のまなじりに、うっすら涙がにじむ。 「あの事件のあと、すさまじい報道合戦が繰り広げられて。ハワースの丘の最寄り駅で発行された切符が事件現場に落ちていたこともあり、取材合戦の舞台はハワ…
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(107)百々子の唇から色が失われていく
草野百々子の話は続く。 ──景子さんと孝道の関係? ああ、それは。……あの人、例の婚活サイトのサクラのバイトを、朝美先生と結婚後も続けていて、その一環で、たまたまなんです。景子さんとは疑似結…
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(106)私はH市一家殺害事件の生き残りです
睦代は、唇を震わせながらお冷やをがぶ飲みする草野百々子を、見つめた。 睦代は、間髪を容れずに、第二の矢を射る。 「草野先生は、H市一家殺害事件の生き残りなんですよね?」 睦代が…
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(105)先生もお母さまを殺害されてますよね?
『さっきも言ったけど、石塚孝道の除籍簿を見てみたら、草野百々子とかつて婚姻関係にあった。それで気になって、草野百々子の戸籍と除籍簿もとってみたら、とんでもないことがわかった』 なになに? …
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(104)まるで刑事ドラマを見ているよう
一方、田端睦代は途方に暮れていた。母親が突然、死んだ。殺されたのだ。殺したのは、ホームヘルパー。呆然と立ちすくむ睦代を横目に彼女は淡々と警察に電話し、「私、人を殺しました」とその場で自首。それから慌…
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(103)おばさんを騙した男ってこの人?
「あたし、やっぱり、家に帰る」 咲良ちゃんが、いきなりそんなことを言い出した。 「帰るって。今は深夜だよ。電車もないよ?」 「じゃ、タクシーで」 「お金は?」 「…………
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(102)終わった…私の人生、終わった
十一月十九日、深夜。 近田朝美は、その場にへたり込んだ。 咲良ちゃんって、ただの家出娘だったの? 全部、私の思い込み? 「なのに、私、咲良ちゃんを殺しちゃった?」朝美は、放心状…
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(101)愛はとてつもない快楽
【なぜ、人々はロマンスを求めるのか】 婚活サイト「Two-winged」が摘発された。主にシニアを対象にした出会い系サイトで、入会金0円を謳い、開始1ヶ月で1万人の会員を集めた。 「だっ…
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(100)お母さまがあまりにうるさいので
スズキさんのあとを追うと、彼女はそのままパチンコ屋に吸い込まれていった。 「は? パチンコ?」 なんで? どうして? しばらくそこで待っていたが、スズキさんはパチンコ屋から出てこない。…
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(99)この半年、溜まったマグマが爆発
再婚したなんて、聞いてないわよ! しかも、二十歳年下? 睦代は、イライラとした頭で、職場に戻った。久しぶりの再会で、ちょっとだけトキめいてしまった自分が、心底情けない。気を紛らわすためにも、…
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(98)タクシーの運転手もアリバイの証人
「本名がわかれば、戸籍謄本をとれるの? 資格もないのにどうやって?」 「まあ、それはさ。蛇の道は蛇って言うじゃん」 哲也は含み笑いを浮かべると、皿に残っていたホットドッグを頬張った。 …