十二の眼
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(41)なにすんだよ、刑事さん
「はい」 「さっきは、申し訳なかったな」 「なにがですか」 「ドアを蹴破った件……係長に、言われちまってよ」 林檎はぶっきら棒だが、きちんと詫びることもできる庄子の性格が好き…
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(40)事件の発覚を望んでいるよう
「謝る必要はねえ。六本木ヒルズは迷宮だ。前も政治家の息子が絡んだ事件がヒルズの一室で起こったんだけどな、令状取れても部屋に入るまでがたいへんだった。ゲートがいくつもあるし、ビル自体持ってる会社が大企業…
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(39)殺害現場周辺で目撃情報はなし
「それを……ドアまで蹴破って。見ろ! この動画のコメントにも、『刑事がドア蹴り破ってる』って書かれてるじゃないか!」 「それは、わたしが」 庄子が言うと堂前が遮った。 「わたくしの…
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(38)矢島紗矢の懇願する最期の声が
「そういうのが溢れてるのか?」 「観る側のたのしみのひとつが、これです。配信者にさえ許可も得ず、勝手に面白い場面だけを編集して拡散するんです」 庄子は、切り抜き動画を見つめる。 …
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(37)格好のいい美少年のような男でした
警視庁本部から堂前に呼ばれて来た、似顔絵捜査官の男性刑事だった。その捜査官は慣れた様子でパイプ椅子を取ると、ちいさな店の端に移動し、鞄から黙々とノートと鉛筆を取り出していく。 「社長、この人ね…
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(36)嘘をつくと大変なことになるよ
ちいさな檻のように狭い不動産屋で、三人はしどろもどろに語る店主の笹谷の前に並び、座っていた。 庄子はじっと年配の店主を見つめ、口を開く。 ここは庄子の得意分野だろう。林檎は思った。 …
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(35)ひとつだけ指紋が採れた
「あなたがタイミングを狂わせたことで、踏み込んだ際に捜査員に思わぬ危険が降りかかる恐れがありました。以後あのような場合は、わたしの指示を待ってください」 林檎は思い出した。 玄関の扉の…
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(34)愉快犯の線が濃くなったのか
地元警察署にも応援を要請し、アパートの前に黄色い規制線が張られた。一〇三号室の狭い部屋のなかは、鑑識係が詰めている。 庄子を含めた捜査員たちは、アパートの前にある駐車場で待機した。 …
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(33)どうやら配信しているようです
胸に赤バッジを付けた捜査員が、 「……この野郎」 と呟きながら壁に貼られたスマートフォンに近づく。いまにもそれを壁から引き剥がしそうだった。 目の前に着き、睨むように画面を覗き…
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(32)画面に殺害直前の矢島紗矢の姿
トタンの玄関のノブに手をかけると、鍵が閉められていた。 「……どうしますか」 赤バッジをつけた捜査一課の若手刑事が、堂前に確認を取る。 と、堂前がなにかを言いかけるより先に、庄…
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(31)玄関横の小窓に明かり
林檎はひとり、宿直室を出た。 特別捜査本部をちらと覗くと、地取り班が話し合っている。庄子の姿も、堂前の姿もなかった。 二係の部屋を見る。 庄子が着替えることなく、いつもの緩め…
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(30)なんの為に働いているのか
二年前、ある殺人事件の容疑者を逮捕した。その時ナイフをむける男を数名の刑事と制服警察官と囲み睨み合いとなった。常軌を逸した犯人が突進し制服警察官が倒され、「刺股」と呼ばれる、柄が三メートルほどあり、…
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(29)警察、辞めようかなって
夜九時。東都テレビから矢島紗矢と同期の三名のアナウンサーが、麻布署へやって来る。 堂前を中心に話を訊いたが、アナウンス部専任部長が言っていた通り、矢島紗矢はあまり飲み会にも参加せず、積極的に…
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(28)夕刊紙に打たれた大きな見出し
特別捜査本部で東都テレビの記者会見を映すテレビを観ながら、林檎が庄子にスマートフォンを見せた。投稿サイト、Xの画面だった。 〈矢島紗矢、昨日死んでたのかよ〉 〈なのに隠してたのか〉 …
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(27)4×3に見覚えがある方はいませんか
「それを言えば女性アナウンサーは大なり小なり、皆そういう被害にあっています。SNSには毎日、罵詈雑言の投稿も飛び交いますから。とにかく男性アナウンサー然り、なにかストーカー行為や直接被害があった場合は…
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(26)なんでジャズなんかが好きなんだ
「堂前さん、なんでジャズなんかが好きなんだよ」 庄子の意外な質問に、林檎も興味を持ったように躰を前に出した。 「事件捜査と、おなじだからです」 「事件とおなじ?」 「わたしが…
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(25)あいつ…BM乗ってるぞ
「林檎。見てみろよ、あいつ……BM乗ってるぞ」 「……あれは警察の車両じゃないですね」 「あたりめえだよ。警察がBMを捜査車両に使うかよ。それに見てみろ。あのイヤホン、警察無線じゃねえぞ。…
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(24)なぜ最初に所轄に通報したのか
庄子は挙手をした。 「どうした、庄子」 立ち上がり、確認をする。 「通報者は麻布署のリモコンに最初に連絡、というのは間違いないんですよね」 「そうだ」 「すみません。…
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(23)矢島紗矢の口中から薬物反応
特別捜査会議は驚くほどしずかに進んだ。それだけ全捜査員が、緊張している証だった。庄子は林檎を間に挟み、堂前と三人で机に座った。まず驚いたのは、被害者である矢島紗矢の遺体から、薬物反応が出たことだった…
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(22)サンキュー ハンサムボーイ
と──後ろから「Excuseme」と声をかけられた。五十代くらいの、アメリカ系外国人女性がふたり、立っている。すると金髪を肩までおろした女性が、スマートフォンを差し出してくる。AIによる自動翻訳機の…
