『デイ・トリッパー』斬新な「ニャー」の響きが世界有数の「美リフ」に仕立てた
- 印刷
- >> バックナンバー
- 今だけ無料
アルバム『パスト・マスターズvol.2』(1988年3月7日発売)⑦
1曲目(無料)から読む
■『恋を抱きしめよう』
時計を一気に巻き戻して、1965年の暮れに逆戻り。アルバム『ラバー・ソウル』と同時期に出された両A面シングルの2曲を紹介する。
すでに『アビイ・ロード』(69年)まで見てきた本連載的には、懐かしくて仕方がない。4トラックのくぐもった音質も懐かしいし、Aメロはポールで、Bメロがジョンという共同作業も懐かしい。さらに邦題がつくのも懐かしいなぁ。
↓………ここから続き………
原題は『WE CAN WORK IT OUT』。「僕たちなら、うまくいくよ」という何ともポジティブな青春歌詞。『アビイ・ロード』まで見てきて、ジョンやポールが、ナンセンスでシュールで小難しい歌詞を散々書いていたのを知っている身としては、こちらも懐かしいぞ。
という、このポジティブ青春感、何だか80~90年代のJポップのような感じがするではないか。そういえば邦題も、「恋」という抽象名詞を、抱きしめられる具体物のように取り扱うあたりが、まさにJポップ的だ。「悲しみがとまらない」(杏里=83年)とか「愛が止まらない」(Wink=88年)とかの。
というわけで、ビートルズ風のJポップ、いわば「Bポップ」がここにはある。
■『デイ・トリッパー』
でもやっぱりこのシングルは、こっちでしょう。
イギリスでは両A面シングルになったのだが、もっと『デイ・トリッパー』推しでよかったのではないか。
この曲は何といってもリフ(曲の中で何度も繰り返される短いフレーズ)だ。イントロから炸裂するギターのリフは世界有数のメロディアスなリフ、つまり美メロならぬ「美リフ」だ。(※ここからはイントロを聴きながら読んでください)
「♪ギョーギョギョギョギョギョーギョニャーギョギョギョ」
というギターによるリフを擬音で書くと、さかなクンみたいになってしまうが、ここでは魚ではなく猫「ニャー」の音に注目していただきたい。
またちょっと専門的ですいません。このリフを階名で書くと「♪ドーミ♭ミソドシ♭ーソレーソシ♭ド」となる(キーはE)。
「ミ♭」「シ♭」が表記をややこしくさせているが、これらは黒人音楽特有のいわゆる「ブルーノート」と言われるもので、ロックのリフでは定番の音だ。
しかし先に傍点を付けた、リフの中でいちばん高い「レ」の音、つまり擬音の「ニャー」は、音楽的になかなかに斬新だ。
そして、この「レ=ニャー」こそが、このリフを世界に名だたる「美リフ」に仕立て上げたのである。ギョギョッ!
■「日本の新しい音楽1975~ "New Music" from 1975」発売!
スージー鈴木氏の大好評連載が書籍化されました!Amazonでも好評発売中です!
■好評連載「沢田研二の音楽1980-1985」をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」(日刊現代/講談社)発売中!



















