「もう一度…」ポール・マッカートニーの切ない願いはジョン・レノンに届かず不幸が連鎖
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アルバム『レット・イット・ビー』(1970年5月8日発売)①
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切ないアルバムである。そもそも制作経緯があまりに切ない。
「ロックンロールバンドに戻って、もう一回ライブをやろうぜ」「そのライブを、余計なダビングなしで、そのまんまアルバムにしようぜ」「ライブ用のリハーサルをテレビ用に撮影して、ライブと一緒にオンエアしようぜ」
何と、これら当初の計画が、すべて実現しなかったのだ。ライブもアルバムもテレビ番組も。
そこで1969年の1月に行われたライブ用のリハーサル(通称「ゲット・バック・セッション」)で残された録音テープを、何とかまとめてアルバムにしたものが今日から紹介するアルバム『レット・イット・ビー』なのだ。聴いていて切なさを感じないわけがない。
不幸は連鎖する。
↓………ここから続き………
ここでまた「5人目のビートルズ」が登場。フィル・スペクターだ。大滝詠一が憧れたことでも知られているだろう。代表曲・ロネッツ『ビー・マイ・ベイビー』(63年)などの独特な音作りが売りの音楽プロデューサーである。
70年の映画『レット・イット・ビー』(テレビ用に撮影された映像から作られた)に映し出されるメンバー間の険悪な空気。あの最悪なムードの中で行われたグダグダなセッションのテープを何とか形にするという、キッツい仕事を任せられたのが彼なのだが、その仕事が、また評判がよろしくないのだ。
収録曲『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』や『アクロス・ザ・ユニヴァース』に重ねられた甘ったるいストリングスなんて、「あれがいいんだよ」なんて言っているビートルズファンにいまだかつて会ったことがない。
と、切なさが切なさ、不幸が不幸を呼んでいるようなアルバムである。
でも、いちばんしんどかったのはポールではなかったか。ジョンに対して「もう一回、いっしょにロックンロールしようぜ」と口説くためのプロジェクトだったのに、うまく進まず、ジョンの気持ちも結局戻ってこなかったのだから。
と、踏んだり蹴ったりな作品だが、それでもやっぱりビートルズ。やられっぱなしではなく、ちょっとは結果を残す。
ジャケットである。
ここまで書いたドツボなムードを見事にパッケージした2次元。やけっぱちのジョン、歌だけに集中するポール、これぞ虚無というリンゴ、そして、やっと解放されるぞという喜びのジョージ。濃厚な人間物語が表現されているではないか。
というわけで気が重いかもしれないが、泣いても笑ってもあと12曲。もう少しだけ、お付き合い願いたい。
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