著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。最新刊は「酒好きの記」(集英社新書)

(49)富士の麓の炉端焼き

公開日: 更新日:

 それから4年後の春、結婚したばかりの娘の連れ合いが富士市に転勤することになって、引っ越しの手伝いに行ったときも、駅の近くに宿を取り、炉端焼きの夕食を楽しんだ。魚介のほかにアスパラやシイタケなども焼いてもらい、熱々のところを楽しんだ。

 その年の秋にも富士市へ出掛けた。目当ては、生シラスだった。初めて駅近くの炉端焼き屋で食べた、あの生シラスだが、移り住んだ娘によれば、田子の浦港の漁協の食堂では、生シラス丼が大変な人気だという。シラスは春から夏のものと勝手に思っていたのだが、実は禁漁は1月から3月だそうで、秋も獲れるのだ。

 出掛けてみれば、なかなかの賑わいを見せている。やっと席が取れるくらいに混雑している。食べ物目当ての行列に並ぶのが苦手な私だが、飾り気のない漁協の食堂の風景は気に入ったし、生シラスと釜揚げシラスが半々で乗っている丼を食べたら、人気の理由がよくわかった。これは、少しくらい待っても、喰って帰ったほうがいい。そう思わせた。

 娘の連れ合いは、生シラス丼のほかに、特製の醤油ダレに漬けたシラスの沖漬けと卵黄を飯に乗せた丼と、2つ平らげていた。

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