五木寛之 流されゆく日々
-
連載9821回 後部座席からの眺め <3>
(昨日のつづき) そもそも左折右折の信号というものは、曲るずっと手前から出すべきである。前の車の進行が予測できないのでは、市内の混雑の中で運転のしようがない。曲りはじめて、ついでに信号を出すのはい…
-
連載9820回 後部座席からの眺め <2>
(昨日のつづき) 車間距離をとって走るのは、安全運転の基本である。前の車がいつ急ブレーキをかけるかわからないからだ。こちらが素早く反応して追突をまぬがれたとしても、背後の車が突っこんでくるおそれも…
-
連載9819回 後部座席からの眺め <1>
60代半ばで車の運転をやめてから、すでにかなりの年月が過ぎた。車というのは、ある意味でセクシャルなものかもしれない。ハンドルを握らなくなること、イコール男性を卒業すること、みたいな感覚があるのだ。 …
-
連載9818回 網走は今日も雪だった <5>
(昨日のつづき) 「千所千泊」などと大袈裟な計画を立てて、全国各地を回り歩きはじめてから、すでに相当な年月がたった。たぶん、千カ所はすでに達成しているのではあるまいか。見知らぬ街や村を訪ねて一泊する…
-
連載9817回 網走は今日も雪だった <4>
(昨日のつづき) 網走から帰ってきて、すぐに昔の資料を探してみた。講談社刊『流されゆく日々(抄)』の1988年から1995年までの項である。 目次をめくると、すぐに「網走セントラルホテル」とい…
-
連載9816回 網走は今日も雪だった <3>
(昨日のつづき) 一夜明けて、気になる天候はなんとかもちそうな感じだ。昨夜のテレビの天気予報では、手強い低気圧が列島に迫り、各地は大荒れの気象になりそうとのことだった。はたして飛行機がちゃんと飛ぶ…
-
連載9815回 網走は今日も雪だった <2>
(昨日のつづき) 夕方、講演の前に、しばらくホテル周辺を歩く。雪で靴が滑って、何度も転びそうになった。 地元の人たちは、たぶん滑りにくいソールの靴をはいているのだろう。雪道を身軽に歩いているが…
-
連載9814回 網走は今日も雪だった <1>
網走へいってきた。 羽田空港を出発するときは、おだやかな天候だった。風は多少冷めたいが、着ていたコートが邪魔なくらいの温度だった。 前の晩、ほとんど寝ていない。搭乗してまもなく眠りこんで…