五木寛之 流されゆく日々
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連載12119回 アヒルの養生論 <2>
(昨日のつづき) 私は昭和7年に生まれた。1932年の9月30日である。 奇しくも故・石原慎太郎さんと生年月日が一緒だ。仕事も、考え方も違うが、同年同日の生まれとあって、気になる存在だった。 …
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連載12118回 アヒルの養生論 <1>
70歳の壁とか80の壁とか言っているが、その辺の壁は大したことはない。 本当に大変なのは、90歳をこえたところにそびえている巨大な壁である。 あれこれ声高に論じておられる先生がたも、まだ実際…
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連載12117回 玉石混淆の世の中 <5>
(昨日のつづき) きょうは月刊誌『致知』の対談。 対談のお相手は、旧知の帯津良一さんである。 世間では医師や弁護士に対しては「センセイ」と呼ぶのが習慣だが、私は基本的に対談の場では「さん」…
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連載12116回 玉石混淆の世の中 <4>
(昨日のつづき) なんとなく気持ちがシーンとする時があるものだ。 「憂」という感じでもあるし、「鬱」という気配もあるし、いずれにせよ気持ちがダウンしている状態である。 これに対して、気分は沈…
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連載12115回 玉石混淆の世の中 <3>
(昨日のつづき) 90歳を過ぎるまで病院というものには、ほとんど縁がなかった素人だけに、先日、ある大病院を訪れてカルチュアショックを受けた話の続きである。 病院というところは、医師と患者とが膝…
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連載12114回 玉石混淆の世の中 <2>
(昨日のつづき) 『病院の選びかた』だの、『名医との出会い』などという記事が雑誌などにはよく出ている。 患者と納得のいくまで話しあって、病いを克服する感動的ストーリーが多い。 なるほど治療と…
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連載12113回 玉石混淆の世の中 <1>
<玉石混淆>という言葉がある。 私はながい間、<玉石混合>だと思いこんでいた。これで作家とは、お恥ずかしい極みである。 これも例によって中国渡来の表現らしい。 <真偽顚倒 玉石混淆>という言…
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連載12112回 多病息災の思想 <5>
(昨日のつづき) きょうは御茶ノ水駅の近くの高台にある大学病院にいった。 病院は死ぬほど嫌いなのだが、仕方がない。 毎回、驚くのはその混雑ぶりである。呆れるほどの人混みだ。 世の中には…
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連載12111回 多病息災の思想 <4>
(昨日のつづき) <噛めば噛むほど味がでる>というのは本当か。 ためしに今朝、朝食についてでた塩ジャケをひときれ、口に運んで噛んでみた。50回噛んでドロドロになったところを、さらに噛む。 1…
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連載12110回 多病息災の思想 <3>
(昨日のつづき) <噛む> <寝る> <動く> 私が心がけている3つのことだ。ほかにもいろんな細かい事はあるのだが、基本はこの3点だと決めている。 人は食べなければ生きていけない。しかも…
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連載12109回 多病息災の思想 <2>
(昨日のつづき) <健康記事もクスリの一つ> と、いうのはイイですね、と、共感してくれる読者がいた。ちゃんと読んでくれている読者もいるんだ。ありがたい事である。心して原稿を書かなければ。 <多…
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連載12108回 多病息災の思想 <1>
<無病息災〉という言葉がある。 息災というのは仏教用語らしい。<息>というのは<とどめる>の意。 しかし、この表現にはどことなく異和感がある。人はそもそも老化という宿命を背負って生きているのだ…
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連載12107回 連休の間に読んだ本 <5>
(昨日のつづき) チェルヌイシェフスキーの文章は、難解だといわれる。帝政下のツァーリの厳しい検閲下に書かれた文章、いわゆる<イソップの言葉>で書かれているからだ、と。 しかし、用心深くなりすぎ…
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連載12106回 連休の間に読んだ本 <4>
(昨日のつづき) <迷路のように入り組んだ文章>などと書くと、作者の思考が超難解であるか、書き手が頭が悪いか、そのどちらかだろうと思いがちだが、チェルヌイシェフスキーは日本語訳で読む限り、練達の思想…
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連載12105回 連休の間に読んだ本 <3>
(昨日のつづき) エンターテインメントの秀作を何冊か読んだあとに、チェルヌイシェフスキーの『宛名のない手紙』を読む。 ニコライ・チェルヌイシェフスキーは『何をなすべきか』という作品で有名な、帝…
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連載12104回 連休の間に読んだ本 <2>
(昨日のつづき) 歳をとると誰でもボケる。ごく自然のことだ。 自然の成り行きには、道理がある。いい歳をして頭が冴え渡っているのでは生きていけない。多少、ユルくなってきているからこそ、高齢者もの…
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連載12103回 連休の間に読んだ本 <1>
連休中に、いろんな本を読んだ。 日頃、折りがあったら必ず読もうと考えて机の横に積みあげてあった本の中から、何冊かを引っぱりだしてページを開く。 しかし、これがなかなか読めないのだ。いつか読ま…
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連載12102回 五月は悩ましき月 <3>
(昨日のつづき) 明日は雨の予報だが、外出の予定はないので、一日ずっと部屋にこもって過ごすつもり。 新しい書店がオープンしたと聞いて、昨日、虎ノ門ヒルズまで出かけていったのだが、結局、みつから…
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連載12101回 五月は悩ましき月 <2>
(昨日のつづき) 人に会って打ち合わせをする日が続く。 「いい加減、人にまかせて、のんびりしていたらどうですか」 と、言われたりもするが、ほかの事はともかく仕事に関しては「おまかせ」というわ…
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連載12100回 五月は悩ましき月 <1>
五月。 私にとって五月は、一年中でもっとも悩ましい季節だ。 まず気温が一定していない。寒かったり、暑かったりする。 そのつど着るものに苦労することが多い。 外はポロシャツ一枚で十分で…