五木寛之 流されゆく日々
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連載10905回 ウイズ・コロナの夏がきた <3>
(昨日のつづき) レインボーブリッジが真赤になった。 東京都のコロナ感染者数が大幅に増えたことを、テレビが伝えている。 しかし、そもそもこの一日当りの感染者数というやつが、どうもよくわから…
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連載10904回 ウイズ・コロナの夏がきた <2>
(昨日のつづき) きょうの新聞朝刊は、一斉にアメリカでの群衆と警察の暴力対決を報じている。 <ロス市街 炎と怒号> というのが毎日の大見出しだ。 ミネアポリスに始まったデモはニューヨーク…
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連載10903回 ウイズ・コロナの夏がきた <1>
午後5時、約束の時間ぴったりにテレビ金沢の蔵さんから電話あり。 もう17年もやっている『新金沢小景』という番組のコメントを電話録音でやることになったのだ。第810回から814回までの5回分を、受…
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連載10902回 「三密」のあとは「三散」 <5>
(昨日のつづき) きょうの新聞では「分散」ということについての論評が、いくつか出ていた。 朝日新聞朝刊に広井良典京大教授がこんな発言をしている。<農村型コミュニティー>というのは、集団の中に個…
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連載10901回 「三密」のあとは「三散」 <4>
(昨日のつづき) 緊急事態宣言は解除されたが、これで以前にもどることはないだろう。 企業はテレワークで十分仕事をやれることを発見したようだ。日立が当分、出社率を50%に押さえるというニュースが…
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連載10900回 「三密」のあとは「三散」 <3>
(昨日のつづき) きょう5月26日(火)。各新聞は緊急事態宣言の終了を大々的に報じている。 <ひと山こえた> などという見出しもあった。ふと昔の『炭坑節』の文句を思い出す。 〽ひと山…
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連載10899回 「三密」のあとは「三散」 <2>
(昨日のつづき) 私が若い頃、レコード会社の歌の録音は、オケと歌とを一緒にやっていた。バンドがスタジオ一杯に陣どり、その中央で歌手がうたう。歌い手が途中で失敗したりすると、 「すみません」「すみ…
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連載10898回 「三密」のあとは「三散」 <1>
先日、スーパーに買物にいったら、入口のところに立看板がでていた。 <ソーシャルディスタンスを保ちましょう> と書いてある。ロックダウンとともに、最近、これほど急速に世間に普及した外国語はないだ…
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連載10897回 回想の力に身をまかせ <5>
(昨日のつづき) 人は誰でも無数の回想の引き出しをもっている。ほとんど無限といっていい膨大な数の引出しだ。そこには無数の記憶がつまっている。 しかし、その引き出しを開けたり閉めたりすることなし…
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連載10896回 回想の力に身をまかせ <4>
(昨日のつづき) 辛かった時代のことを思い出すのは、すこしも辛くない。今はすでにそこをくぐり抜けてきているからである。 一箇のジャガイモを何人もの大人と奪い合ったことがある。体力にまさる連中に…
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連載10895回 回想の力に身をまかせ <3>
(昨日のつづき) 自分でいうのも気恥ずかしいが、私はどちらかというと逆風につよい人間である。追い風のときは、なんだか足もとがふらついて、自分でも後から恥ずかしくなるような振る舞いをしていることが多…
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連載10894回 回想の力に身をまかせ <2>
(昨日のつづき) 回想というのは、過去を思い返すこと、とされている。しかし、それはいわゆる「思い出」にふけることとは、どこかちがうような気がしないでもない。 『おもいで酒』などという昭和の歌謡曲…
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連載10893回 回想の力に身をまかせ <1>
このところほとんど外出しなくなった。 コロナウイルスの世界的流行のせいである。 それまで毎日、仕事の関係者と会ったり、月に何度かは各地の催しに顔を出したりしていた。外へ出て、人と会って、動き…
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連載10892回 コロナの五月が来た <5>
(昨日のつづき) 5月14日の新聞朝刊によれば、アメリカのコロナウイルス感染による死者数は、8万2000人に達している。トランプは前のめりで経済再建にハッパをかけているが、はたして大丈夫だろうか。…
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連載10891回 コロナの五月が来た <4>
(昨日のつづき) アメリカがなぜコロナ被害の最前列に立ったのか。限られた情報だが、数字を見るとなんとなくわかってくることがある。非白人、外国人労働者、低所得者層などに被害が多いことだ。これは誰が考…
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連載10890回 コロナの五月が来た <3>
(昨日のつづき) きょうの読売新聞で読んだのだが、シェークスピアが『リア王』を上演した1606年は、感染症の大流行の時期だったそうである。4カ月も劇場が閉鎖されたという。 『リア王』の中で、忘れ…
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連載10889回 コロナの五月が来た <2>
(昨日のつづき) きょうは午前中なんとなく霧がかかったような空模様だったが、午後からは青空になった。日の光を浴びて樹々の緑が鮮やかに目にしみる。 五月は生命のエネルギーをまざまざと感じさせる季…
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連載10888回 コロナの五月が来た <1>
この1カ月ほど、ほとんど人と会うことなく過ごした。これまで半世紀以上の文筆生活で、かつてなかったことだ。多い日は一日、3社以上の編集者と打ち合わせをしていたのだから大変な変化である。 ただ原稿だ…
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連載10887回 ニュース落穂拾い <2>
(昨日のつづき) きょうは新聞の休刊日。 なぜ各紙いっせいの休刊なのだろうと不思議に思う。全員そろって何かやる、一斉に行動する、というのが日本人はよくよく好きらしい。 あとはテレビにまかせ…
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連載10886回 ニュース落ち穂拾い <1>
さあ、明日から仕事だぞ、と張り切るわけにもいかない複雑な気分の5月である。 部屋にこもっているあいだに、しばらくはテレビに凝っていた。しかしBSだの、昔のドキュメント映像だのも見ているうちに、や…