五木寛之 流されゆく日々
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連載10825回 現代の「四苦」とは何か <1>
高齢化の問題はすでに論議の段階を通りこして、誰の目にもあきらかな現実となった。 しかしそれにもかかわらず、以前は60歳あたりから高齢者扱いだったが、最近は70歳以上という感じである。 高齢者…
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連載10824回 夜行性人間の告白 <5>
(昨日のつづき) これまでにない異常なことがおこった。 なんと今日は午後6時に起床したのである。 これまで午前6時か7時には眠りについて、目覚めるのが午後の2時、というのが私の規則正しい健…
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連載10823回 夜行性人間の告白 <4>
(昨日のつづき) 深夜のラジオ番組といえば、旧ラジオ関東の『きのうの続き』というのがあった。 大橋巨泉の作ったコピーらしいが、「きのうの続きはまたあした」で終るフリートークの番組である。 …
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連載10822回 夜行性人間の告白 <3>
昔ばなしになるが、以前、TBSラジオで『五木寛之の夜』という番組をやっていた。最初は夜の9時、やがて深夜番組になった。当時、イントロのナレーションが、ちょっとした話題だった。九州弁のイントネーション…
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連載10821回 夜行性人間の告白 <2>
(昨日のつづき) 南方諸島の先住民のあいだでは、夜と昼についてこんな思想があるという。 昼は人間の時間。 夜は精霊の時間。 昼間は人間が活動し生活する現実の時間で、夜は想像力が目覚める…
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連載10820回 夜行性人間の告白 <1>
流行というものは、おそろしいものだ。 ラグビーで国中が盛り上ったと思えば今度は相撲ブームである。 徳勝龍の優勝には、だれもが驚いたことだろう。本人も地元もびっくりしたにちがいない。 私の…
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連載10819回 私の体験的養生訓 <9>
(昨日のつづき) 人生というものは、思うにまかせぬものだ。この歳になっても、あらためてそう思う。 努力が必ずもむくいられるものではない。しかし、努力はしなければならない。自分の健康に関してもそ…
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連載10818回 私の体験的養生訓 <8>
(昨日のつづき) ここで再び嚥下の問題にもどる。 物を飲み込むという行為は、ふだん私たちが何気なくやっている動作である。いちいち意識して飲みくだしている人は少い。 しかし、ここに大きな陥…
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連載10817回 私の体験的養生訓 <7>
(昨日のつづき) 私が健康について書いたり喋ったりするのは、自分の体験からの個人的感想にすぎない。 医学ではエビデンスという客観的証明がなによりも大事にされる。代替療法と称される中医学およびわ…
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連載10816回 私の体験的養生訓 <6>
(昨日のつづき) ふたたび嚥下について書く。 誤嚥のおそろしさについては、何度も書いてきた。喉にモノをつまらせて亡くなる人も少くないが、いま論じているのはそれではない。 誤嚥によって肺炎に…
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連載10815回 私の体験的養生訓 <5>
(前回のつづき) 朝、いくつかの錠剤を一気に飲む。大した薬品ではない。八味地黄丸とか、わかもととか、ビオフェルミンなどの昔からのサプリメントである。 これも全部まとめて口に放り込むと、水で飲み…
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連載10814回 私の体験的養生訓 <4>
(昨日のつづき) 左脚の不具合いは今年になってますます進行してきたようだ。 この調子では年末ぐらいには歩行困難という事態におちいりかねない。なんとか少しでも好転する道をみつけなければ。 病…
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連載10813回 私の体験的養生訓 <3>
(昨日のつづき) 大相撲初場所の2日目、たまたま白鵬が見事に敗れるところをテレビ中継で見た。 ひところの遠藤ブームが去ったあと、前頭筆頭に落着いている遠藤が、ものの見事に横綱白鵬を投げとばした…
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連載10812回 私の体験的養生訓 <2>
(昨日のつづき) 東洋医学にせよ西洋医学にせよ、大部分の対策は薬品である。最近では驚くような劇的な効果を発揮する新薬も次々と開発されてきており、話題になってきた。 戦後のペニシリンの登場は劇的…
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連載10811回 私の体験的養生訓 <1>
高齢者(一般・低所得者)の自己負担医療費が1割であることで助かっている人々は少くない。 しかし最近、いろんな人から、不安の声を聞くようになった。平成26年4月以降に70歳になる場合は、2割負担に…
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連載10810回 時代のテストステロン <5>
(昨日のつづき) 「戦争がパンとサーカスの<サーカス>にあたるという説はなんとなくわかるけど、実際にはどういうふうに展開されるわけ?」 と、友人のQ君が首をかしげる。 「戦争したくないという…
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連載10809回 時代のテストステロン <4>
(昨日のつづき) 東京オリンピックは、令和最大のサーカスだ。その祭りの終った後はどうなるか。 平凡な日常への回帰は、もうないだろう。刺戟に刺戟を重ねて、なかば麻痺した国民感情は、さらなる刺戟を…
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連載10808回 時代のテストステロン <3>
(昨日のつづき) <パンとサーカス>というのは余りにも有名な言葉だが、よく言ったものである。 問題の中心に注目されずに、人びとの関心をちがう方向にむける。民衆は常にお祭り好きなものなのだ。 …
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連載10807回 時代のテストステロン <2>
(昨日のつづき) 以前、メガビタミン主義というのが注目を集めたことがあった。アメリカからやってきた流行である。 ビタミンCを中心に、さまざまなビタミンを超大量に摂取するという健康法だ。私は若い…
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連載10806回 時代のテストステロン <1>
正月気分も昨日で終った。きょうからはこのコラムを皮切りに、いろんな連載の原稿の締め切りが待っている。さあ、働かねば。 机に向かって原稿用紙に文字を書く。いまや石器時代の作業のようだ。野坂昭如、井…