ラストエンペラー
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                         (80)プロジェクトリーダーの凛が来日〉 トミタ本社の大会議室に、新型エンペラー開発プロジェクトのチームリーダーたちが一堂に会したのは、役員会議が終了した二ヶ月後のことだった。 まず最初に新型エンペラー開発の発案者である村… 
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                         (79)古巣に戻って技術を生かす苛立ちのあまり、思わず村雨は声を荒げてしまったのだが、 「まあ、その件は、いまここで議論しなくともいいじゃないか。話を元に戻そうや」 氷川が割って入ると、続けていった。 「私は、… 
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                         (78)過去の成功体験が捨て切れない「成功の度合いにはよるが、当たれば想像もつかない富が得られるのがベンチャーの最大魅力だからね」 氷川が村雨の言葉を継いだ。「そこで得た資金を元手に次のプロジェクトを立ち上げるもよし。他のプロジ… 
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                         (77)プロジェクトごとに集合離散役員たちの間から、どよめきが起きた。 そんな中にあって、 「外部に人材を求める?」 またしても枝島が一際大きな声を上げた。 「もちろん、社内のリソースでの新型車の開発は… 
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                         (77)勝敗を分ける鍵はスピード「私はEV市場において、勝敗を分ける鍵となるのはスピードだと考えている。そして、それこそが我が社の弱点となる可能性が高いと危惧しているんだ」 「スピードとは、どのような部分でのことですか?」 … 
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                         (75)考えの浅さが見て取れる「EV化を推進するに当たって、私の方から工場再編の計画案を提出いたしましたが、エンペラーの製造ラインは残しておくようにと社長から指示がございました。そこから察するに、あの時点で既に社長は、新型エンペラ… 
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                         (74)参加させるメリットならある村雨は断言すると続けた。 「トミタは誰しもが認める世界的自動車メーカーだ。多少の波はあっても常に増収増益。莫大な資産もあれば、豊富な研究開発費を使って、新技術を次々に確立してきたし、世界各地に… 
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                         (73)自社の車を乗り継ぐ愛社精神「車に限ったことではありませんが、本当に自社製品がベストなのかなんて、自腹を切って実際に使ってみなければ分かりませんよ」 そんなことは一度たりとも考えたことはなかったのだろう。氷川は「ふむ」と… 
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                         (72)うちのエンジンより優れていると?「それに、検討するだけの価値はあると思いますので……」 そう続けた村雨に、 「ほう、それはなぜだね?」 珍しく氷川は冷たい声で問うてきた。 「エンジンが新型車用に開発された… 
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                         (71)間違いなく反対意見が出る◇第三章◇ 〈1〉 「企画書、読ませてもらったよ」 会長室のソファーに村雨が腰を下ろすなり、氷川が口を開いた。 「いかがでしょうか……」 村雨は感想を促した。 … 
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                         (70)F1チームにいた戸倉か「聞いたって、誰から?」 「俺は研究所にいたころの上司からだけど、どうも又聞きらしくてね。その人から君にも話があったのかっていってきてさ」 戸倉? 戸倉って誰だ。そんなヤツが、技術部門に… 
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                         (69)昇進レースが終われば同期に絆「一緒に仕事をしたのは、僅かな期間だったのに、覚えていてくれたんだね」 荻原は嬉しそうに、そして懐かしそうに目を細める。 「もちろん、覚えていますよ。あの会議では、散々やられましたので」… 
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                         (68)手厚いアフターケアは不可欠「第一、オーダーはネット経由といってもだ。数百万円もする買い物だぞ。ユーザーだって手厚いアフターケアを受けて、気分が悪かろうはずがないし、コミュニケーションを密にしておけば買い換えの時にもトミタってこ… 
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                         (67)部品一つとっても餅は餅屋「いやね、もしや新型エンペラーを開発するつもりなんじゃないかとは思ったものの、実のところ、そんなことやれるわけがないって思ってたんですよ。だってそうじゃないですか。ガソリンエンジンの開発部門からは、既… 
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                         (66)新情報をもって男の待つ場所へ〈5〉 会長室を辞した枝島は、その足で品川駅前のホテルのレストランへ向かった。 まだ昼食時には早いこともあって、客の姿はほとんどない。 奥の席に枝島を待ち構える一人の男の姿があ… 
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                         (65)次期社長を狙う枝島らしい言い草「つまり?」 話半ばで遮った氷川に向かって、枝島はいう。 「間違いなく、これから市場に参入してくるEVメーカーは日本も含め、世界中で同じ販売形態を取るでしょう。しかし、我が社が同じ土俵に… 
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                         (64)枝島の本題はこれだったのか「もちろん」 氷川は頷いた。「EVについては、すでに二十車種ものラインナップを公表しているし、充電インフラの整備状況を見ながら、逐次販売を開始することになるんだ。バッテリーの性能向上やシステム… 
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                         (63)写真はカメラからスマホへ写真はプリントで“見るもの”から、シャッターを押した次の瞬間から、スマホのパネルで“見れるもの”へと変わってしまったのだ。それどころか、家族、仲間内で“見るもの”であったはずの写真が、ネットの進化に… 
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                         (62)ディーラー網の再構築は必至「EVの時代になってもトラブルは必ず発生するからね。販売後のメンテナンスサービスという点では、ディーラーの必要性は薄れるものではないのだが、それだけではなあ……」 「いや、そのトラブルにしても、… 
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                         (61)EVになれば店舗すら不要〈4〉 ガソリンエンジン車からEVへ。 この自動車業界はじまって以来の革命的大変化は、既存のメーカーにとって、まさに生存を賭けた戦いの始まりを意味する。 近々公表される早期退職… 

 
                             
                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                     
                     
                     
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
         
         
         
         
         
         
        