1975 ~そのときニューミュージックが生まれた
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阿木燿子デビュー作の見事なストーリー展開
「アンタ あの娘の何なのさ!」。もちろん「娘」は「こ」と発音する。 1975年を代表する流行語である。ネタ元は、今回取り上げる、この長い名前のバンドによる長いタイトルの曲だ。週間チャート1位を…
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さだまさし23歳…「僕にまかせてください」の歌詞設定をよく思い付いたものだ
バンド名、曲名を覚えている人が、どの程度いるのだろう。 それでも週間チャートでベストテン入りしたヒット曲で、40万枚近くも売り上げているのだ。明らかに「1975年を代表する1曲」である。 …
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プロデューサー小坂洋二は「5年以内にレコード大賞を獲らせます」を有言実行した
1975年を代表する曲である。何といっても、この年の日本レコード大賞受賞曲だ。 作詞・作曲はフォークの世界で名を上げ始めていた小椋佳。ここで驚くべきは、布施明が所属した渡辺プロダクションの「…
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「4人目のはっぴいえんど」はギター1本背負って渡米し、有名プレーヤーを狂喜させた
私は、このアルバムを聴くと、いつも野茂英雄のことを思い出す。 いや、1975年の鈴木茂が、アメリカの音楽界で活躍したというわけではないのだが、たった1人で、ギター1本背負って、ロサンゼルスの…
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傑作「風街ろまん」は「抱きしめたい」で語ってやれよ
前回「はっぴいえんど=日本語ロックの創始者」という語られ方に疑義を唱えたが、決して、はっぴいえんど自体を否定しようとしているわけではない。 むしろ、彼らの優れた取り組みに対して、そんな上っ面…
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「日本語ロックの創始者」のレッテルは乱暴で陳腐過ぎる
この連載では、1975年の音楽シーンを振り返る枠組みとして「GREAT3=吉田拓郎、井上陽水、荒井(現・松任谷)由実」と、この年に(ソロ)デビューする「BIG4=山下達郎、浜田省吾、矢沢永吉、中島み…
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「ニューミュージック歌謡」の導入で当時の大学生を虜に
キャンディーズ、起死回生の一曲。 前作「なみだの季節」(1974年)までは、人気も売り上げもなかなか伸びなかったのだが、この曲で一気にベストテン入り、売上枚数も20万枚を超えた。 起…
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手ごたえのない演奏を救ったのは山下達郎 弱冠22歳の雄叫びだった
この曲のアレンジャー・松任谷正隆は悩んでしまった。 ──たまにはレコーディングをやらせてほしい、と言われてね。僕はOKしたものの、演奏はティンパンのようにはいきません。リズムはできるだけシンプ…
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口紅で鏡に伝言を残して出ていったのは…あの人の妻?
シングル盤としては、当時それほどヒットしていない。売上枚数は、本連載で紹介する楽曲の中で、最低水準だろう。 しかし現時点での知名度はトップクラスのはずだ。ユーミンが国民的な音楽家になったこと…
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18年後のJポップを先取りした「ほのぼのバンド」の先見性
ヒット曲である。1975年の中ヒット、そして93年の大ヒット。 元々は75年のチューリップの曲なのだが、18年後の93年、財津和夫名義のセルフカバーが、突如として大ヒットするのだ。そう、フジ…
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歌詞世界に日常、そして日本を一気に引き寄せた吉田拓郎の腕力は特筆すべき
この曲がヒットした、ヒットし過ぎたから、普通に感じるのだろう。しかし私は指摘したいのだ。「よくこんな歌詞でヒットしたな」と。 「こんな」というのは「こんな和風の」「こんな古ぼけた」という意味で…
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ヒットの理由は大衆性を招き入れた「声」にある
かまやつひろしの大ヒット曲である。 私は彼が在籍したザ・スパイダースが大好きで、とりわけスパイダース時代にかまやつひろしが発揮した鋭過ぎる音楽センスをこよなく愛する者である。 しかし…
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今は失われた音とあの頃の青春の重さにグッとくる
恥ずかしい話を白状すれば、この原稿のために改めて聴いて、グッときた。グッときすぎて、ちょっと泣いてしまったのだ。そして、今聴くとグッとくる理由が少し分かった気がした、という話を早く書きたいので、基本…
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山上路夫の歌詞と筒美京平の編曲に立ち込める「匂い」
いよいよ今回から、1975年にヒットした曲やアルバムを時系列で1曲/1枚ずつ取り上げていく。 まずは1月20日発売のこの曲。野口五郎を象徴する一曲である。 しかし驚くのは、まずこの曲…
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1975年4月13日、日曜日に新たな伝説が始まった
日比谷公園大音楽堂(野音)が、今年の10月1日に使用休止となり、再整備工事期間に入る。 数々の伝説のコンサートが開催された会場だが、1つだけ挙げるとすれば、キャロルの解散コンサートになるだろ…
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「キャロル」でのジョニー大倉の先見性とボーカルはもっと評価すべき
この連載では、1975年にデビューした山下達郎、浜田省吾、中島みゆき、矢沢永吉を「BIG4」としてくくるのだが、矢沢永吉の場合は「ソロデビュー」であり、バンド「キャロル」としては3年前にすでにデビュ…
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初期ファンを幻滅させた「ルージュの伝言」のポップ感
1975年が「ユーミン元年」だったという話をする。 「ルージュの伝言」「卒業写真」が収録されたアルバム「COBALT HOUR」を6月に発売。バンバン(ばんばひろふみ在籍のグループ)に提供した…
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荒井由実の「新感覚派」の本質は変態的な音楽性にある
つくづく思うのは、歌謡史、ロック史、Jポップ史は、歌詞で語られがちだということだ。 一方で音楽性、それも音楽理論に関係するあれこれは語られにくい。理屈っぽいし、専門的だし、理解されにくいのだ…
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見事な録音も加勢したから「氷の世界」は売れまくった
とにかく売れた。売れまくった。 井上陽水のアルバム「氷の世界」(1973年)のことだ。 何といっても日本初のミリオンセラーアルバムである。90年代に入って、いわゆる「CDバブル」に乗…
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デビューアルバム「断絶」ヒットの理由は、若者の「敗北感」だけではない
「GREAT3」、2人目は井上陽水。 吉田拓郎とは違う意味で1970年代前半、時代の寵児だった。違う意味──違う価値観というか、違う宇宙というか。 この時期の井上陽水といえば、何といっ…