江戸おんな職人余録 第一弾「半端もん」
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(4)どの工程も身につくのに10年
鏡は気の遠くなるような工程を経てつくられる。 まずは鏡背の文様を定める。多くは、「踏み返し」と呼ばれる技法に頼る。すでに完成している鏡の文様を型に押し当て、鋳型を複製する方法だ。こうすること…
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(3)新次は千沙の前では笑わない
姉の初が大奥へ入って十年が過ぎた。 千沙は二十四歳になっていた。円屋を保つため、初の許嫁だった新次と一緒になって八年。 夫婦仲は情けないほど悪い。 (新さんは姉さんと想い合って…
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(2)見て、お父つぁんの鏡よ
「見て、お父つぁんの鏡よ」 現実とは思えぬ大奥のありさまに呆然と立ち尽くしていた千沙の横で、ふいに姉の初が叫んだ。 「えっ」 「ほら、雛壇の一番上の右端に飾られた鏡」 夢か…
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(1)姉妹で招かれた大奥の雛祭り
千沙は幸せな子ども時代を過ごした。 父は、江戸ではそれなりに名を馳せた鏡師で、道灌山を北に望む下駒込村に数十人の職人を抱える工房「円屋」を営んでいた。 一つ違いの姉の初が、九つ年上の…
