(39)“ダメ元”で母を家に戻してみようか…兄に相談した
「藤島さんから遊びに来ませんかって電話があったよ。今から行ってみない?」
怖い顔をしているおかんに告げた。すると一気に緊張が解けた顔になり、「うん、行きたい」。二つ返事だった。渡りに船、地獄に仏とはこのことだろう。すぐに連れて行くと、藤島さんは玄関先で待っていてくれた。
おかんはそれに気づくと、慌ててドアを開け車を降りようとする。オイオイ危ないよ。「ひとりで出ないで!」。大急ぎで助手席側に回り介助に向かうと、案の定ひとりで降りることができず、悔しそうな顔でジタバタしていた。
よほど会いたかったのだろう。なぜなら藤島さんはおかんの最も親しい友人で、同じ世代の息子を持つ母親同士、かれこれ50年近い付き合いになる。一戸建てにひとり暮らしをしているという境遇も同じ。ここ数年は健康や将来の不安などを語り合うことが多かったようだが、今回の転倒騒ぎで1年ぶりの再会になったという。
家の中に招き入れられると、玄関や廊下に手すりが付いていた。もしやと思い尋ねると、「私もね、脊柱管狭窄症などいろいろあって要支援2なのよ」と藤島さん。週に1回リハビリに通っているという。するとおかんは「ほらね、家で何とか暮らせるのよ」と口を出し、今のサ高住がどれだけ嫌なのかを力説。そして「ホントにこの子は心配性で余計なことばかりしてくれてね」と毒を吐くが、表情に険しさはなかった。


















