(38)食事以外は部屋にこもったままの母…さあ、どうする?
サ高住に入居してからのおかんは三日にあげず電話をかけてきて「ここは嫌だ」「家に帰る」の訴えが延々と続いた。なだめてもなだめても繰り返される。兄の方も同じだが、さらに「お金を使い込んでいる」と疑われ、預かっている通帳に記帳して見せに行っても納得してもらえず「ハンガーを投げつけられた」とグチっていた。
サ高住での暮らしも荒れていた。食事以外は部屋にこもり、訪問診療やリハビリを拒否。全スタッフを信用せず孤立していた。このままでは心身共に悪化してしまうだろう。リスク覚悟で自宅に戻すことを兄と相談してみるが、なかなか合意に至らない。そこで妥協案として思いついたのが、施設を替えることだった。
「そんな嫌だったら、この前見に行ったC有料老人ホームに引っ越してみないか」
おかんに最初に提案した時の拒絶は強く「そうやって家に帰さないつもりなんだね」と取り付く島もなし。しかし根気よく話をしていくと何度目かで「そんな施設のことは覚えていない」に変わり「ここを出られるなら見学に行ってもいい」に変化した。これ幸いとばかりに即予約を入れ日程を決めると「うんうん、ありがとう」と素直に喜んでくれた。わずかな光が見えた瞬間だった。


















